論理的な考え方→「斎藤氏は被害者」の傾向 兵庫知事選調査で
兵庫県知事選で再選した斎藤元彦氏について、論理的思考能力が高い県民ほど、「マスコミや県議会による印象操作によって陥れられた被害者だ」と考えた――。社会心理学の専門家による調査で、そんな結果が出た。 【写真特集】斎藤知事、最後の証人尋問での表情 鹿児島大の大薗博記准教授と昭和女子大の榊原良太准教授による調査。兵庫県知事選後の11月20、21日にオンラインで実施した。 兵庫県を除く全国の339人(平均年齢50・7歳)と、兵庫県民の384人(同52・4歳)の有効回答を得た。 回答者には、相関関係と因果関係の違いなどの理解力を問う「科学的推論能力テスト(11問)」、直感ではなく、じっくりと物事を考えられるかを問う「熟慮的思考能力テスト(7問)」の2種類のテストを解いてもらった。 この結果から、一定の論理的思考能力を測定できるという。 全国では、テストの正解率が高い人ほどネット交流サービス(SNS)や動画投稿サイト「ユーチューブ」の情報を信頼しない傾向が見られた。 一方、兵庫県民では、全国とは異なる傾向が出た。 テストの正解率が高い人ほど、新聞やテレビの情報を信頼しない傾向が見られた。 テレビや新聞、県議会が印象操作をしていると疑って「斎藤氏は被害者だ」と考える人も、テストの正解率が高いほど多かった。 調査では、「信念を裏付けるために、なるべく多くの証拠を見つけようとするか」「主流の見方が間違っていると感じる事柄をできる限り調べるか」などについても、5段階で尋ねた。 兵庫県民では、論理的思考能力が高い人ほど、より情報を得ようとしていたという。 大薗准教授は「情報リテラシーの低い人がSNSの真偽不明な情報に踊らされて斎藤氏を支持したという言説とは逆の傾向が弱いながらも出た」と指摘する。 理由について、「正しい判断を迫られると、論理的思考能力が高い人の方が、情報を探し求めるのかもしれない。斎藤氏を巡る疑惑がはっきりしない中で多くの情報に触れ、それらが一定の説得力を持っていたのはではないか」とする。 ただ、「さまざまな解釈は可能で、今後も研究する必要がある」とも付け加えた。 兵庫県政を巡る問題や新旧メディアの影響、選挙や民主主義について考える材料にしてほしいとし、調査結果を「note」で公開している。【稲垣衆史】