『笑うマトリョーシカ』清家の“意図”を徹底考察 「ハヌッセンは存在しない」という仮説
道上(水川あさみ)に打診をした理由は“腕試し”?
●「ハヌッセンは存在しない」という仮説 そんな2人の支配から目を覚ますきっかけをくれたかに思えた亜里沙も結局は自分を意のままに操ることに快感を覚えており、自身が尊敬していた武智と愛人関係になっただけでなく処分したことを清家は何かのきっかけで3年前に知ってしまったのではないか。そして、鈴木を交通事故に遭わせたのは清家自身なのではないだろうか。亜里沙が書いた脚本『最後に笑うマトリョーシカ』のシナリオに沿って鈴木を処分し、その罪を彼女に着せようとしたのではないだろうか。 となると、実は清家に「ハヌッセン」など存在せず、清家のブレーンは清家自身なのではないかと思えてくる。敏腕ジャーナリスト・道上香苗(水川あさみ)にブレーンになってほしいという衝撃の打診をしたのは、この真実に彼女が辿り着けるか腕試しをしたいという思いや、彼女だけは誰も気づいてはくれない清家自身の自我を見出してくれると期待したからではないだろうか。もしかすると清家は道上の名前を彼女が書いた過去の記事から把握しており、真実に鋭く切り込む取材記事を読み、彼女だけは他の人とは違い自分を見くびらないと思ったのではないだろうか。会って早々に道上にだけ「これからも僕のことを見ていてくださいね」とささやいたのも、実は誰にも操られてなどいない紛れもない僕自身を見ていてくださいという意だったのかもしれない。 だとしたら、清家は実権を握り誰にも指示されず、誰の意図も汲まずに政治家を演じながら何を成し遂げようとしているのか。彼の悲願とは一体何なのだろうか。
佳香(かこ)