『ゴールデンカムイ』キャラクターの座る場所にも意味があった!? 監修者が明かす、とてつもなく細かなこだわり
カムイが出入りする「神窓」と輸入品を置く「宝壇」
この横座の奥にはロルンプヤㇻ「神窓」と呼ばれる窓があり、普段は閉まっています。ここはカムイが出入りする場所と考えられており、熊や鹿を獲ったらその肉はこの窓から中に入れますし、カムイを祀るトゥキ「杯」やイナウ「木幣」なども、ここから外に出します。 熊を獲った時には、神窓の下に熊の頭を安置します。当然、熊の霊魂は入口の方を向くことになりますので、そこから見た右左が座席の名前になっています。だから入口から見た時に、右側が「左座」、左側が「右座」になっているわけです。 ちなみに、5巻44話で、尾形が「あの家は出入り口が一箇所、窓が三箇所」と言っていますが、同じ地域ではどの家も同じ作りなので、どの家であれ窓や出入り口の位置は同じです。 神窓は普段閉めていますので、入口も開いている窓も全部同じ方向に向いていることがわかりますね。そうやって風が家の中を吹き抜けることがないようにしているわけです。 右座と左座では右座の方が上座、同じ側では入口に近いところより横座に近い方が上座です。したがって、家の中で一番の上座は、神窓側の右座寄りということになります。 地域によって家の向きは違いますが、平取(びらとり)などの沙流(さる)地方や白老(しらおい)地方の家では東北隅がここにあたり、チセコㇿカムイ「家の守り神」という大型のイナウが据えられています。沙流地方では1体ですが、白老では3体がセットになっています。 6巻50話の扉絵で、谷垣の頭の右上あたりの家の隅に、何かもしゃもしゃっとした感じのものが3つ描かれていますが、これは北海道博物館に展示されている白老の家をモデルにしたもので、右からチセコㇿカムイ、イソプンキヨカムイ「漁猟の守り神」、イレスプンキヨカムイ「育児の守り神」の順に並べられています。 また、そのあたりの壁際には、シントコ「行器(ほかい)」やパッチ「鉢」などの、和人から手に入れた漆器類を並べ、壁にエムㇱ「太刀」やイコㇿ「宝刀」を下げます。 これらの品々が宝物であるのは、これらがすべて輸入品だからです。アイヌは自分たちの手で作れないものを宝物と考えていました。この宝物を積み上げたところをイヨイキㇼ「宝壇」やイモマ、イヌマなどと呼びます。6巻50話の谷垣の後ろや、5巻44話でフチの後ろに見えているのが、このイヨイキㇼです。裕福な家ではこれが二重にも三重にも積み上がって、大層立派な作りになっています。