過激な仕掛人の発言でキレた!?ジャガー横田の退任で揺れるストロングスタイル女子
平井代表「誰にマッチメークをお願いするかなどは、アタマがパニック状態で考える余裕がまだありません」
ジャガーがはじめてSSPWのリングに立ったのが、20年12・17後楽園でのジャガー&山下りな組vsSareee&世志琥組だった。SSPW女子で4度目の試合だったこのカード以後、ジャガーはセミレギュラー的に参戦し、21年春に女子の統括に就任した。タイガー・クイーン誕生のプロジェクトがスタートしたのもその頃。役職名こそ相談役に替わったものの、SSPWで試合をしながらマッチメーク担当も続けている。一方で、リングでは自身が育て上げたクイーンとの対戦を望むようになり、薮下めぐみとのコンビで新設SSPW女子タッグ王座も獲得した。ヒール軍CRYSISを率いるジャガー横田と、バックステージでカードを考える自分。自身はファイターとの思いが大きいだけに、次第に違和感が大きくなっていたようなのだ。 「マッチメークをして選手にオファーする。闘う相手に自分から話すというのは矛盾があるし、そういうことはもうやめたいと、以前からおっしゃられていたんです」と、平井代表。また、「新間会長の言葉で怒ってやめると言ったのではなく、それ(退任)はもともと話す予定だったんです」とも。両者の話し合いから、10月15日の会見において辞任を発表するつもりでいたそうだ。が、新間会長の発言でそのタイミングが早まってしまった。しかも途中で席を立ってしまっただけに、よりスキャンダラスに映ったのである。 「プレーヤーに集中したい」「いち選手としての参戦オファーなら受ける」というのがジャガーの考え。それを知っていたからこそ、平井代表はジャガー退席後、渋々ながらも退任を認める形になったのだ。と同時に、今後もジャガーには出場してほしいと考えている。女子タッグのベルトを保持しているだけに、なおさらだ。 よって、11・5新宿はジャガーのマッチメークによる最後の大会となる。会見時にはすでにジャガー&Sareee組vsクイーン&薮下組のタッグマッチとダーク・ウナギvsChiChiのシングルマッチが発表されている。女子の試合がもう1試合おこなわれる予定だが、10月28日時点では未定。そのあたりにも団体の混乱ぶりが表れていると言えるのではないか。 それにしても、11・5新宿におけるジャガーのカードは現在の思いを象徴しているとも言えそうだ。タッグパートナーの薮下とは一時的にコンビを解消し、対角に立つ。12・5後楽園を前に急きょ決まったスペシャルイベントだからこそ、特別なカードを実現させたいと考えたのだろう。また、約1年ぶりとなるクイーンとの対戦は、いち選手として自身が育てたレスラーと対峙したいとの思いから。同時に、いずれはシングルで闘うべき選手であるだけに、ここで一度手を合わせておきたいとの考えもあるのではないか。 そして、Sareeeとのタッグ結成。SareeeがWWEから帰国後、いまや決して珍しいチームではないが、そもそもジャガーがヒールに転向、CRYSISをつくったのは、Sareeeをはじめ、当時伸び悩んでいた若手を鼓舞するためだった。CRYSISには、「相手を泣かせる(CRY)」「女子プロの現状への危機感(CRISIS)」との意味が込められている。 Sareeeは井上京子、伊藤薫ら全日本女子プロレスのレジェンドから英才教育を受け、ジャガーとのタッグで実践教育に臨んだ。そこからジャガーは愛弟子を谷底に突き落とし、奮起を促したのである。そのSareeeがいまや女子プロ界のトップとして活躍。ここでとなりに立ってみたいと思うのも、現役にこだわるジャガーらしさなのである。 今回の一件により、ジャガーのカードが俄然注目を浴びることとなった。きっかけとなった新間会長も決してヒールを否定しているわけではない。そもそも、アントニオ猪木vsストロング小林のトップ対決や、猪木vsモハメド・アリの異種格闘技戦など、まじわるはずのないもの同士をぶつけてきたのが“過激な仕掛人”がそう呼ばれる所以ではないか。正統派と悪の激突もそうだろう。両極のぶつかり合いに、プロレスの魅力がある。もしかしたらこの一件も仕掛け?と受け取るのは考えすぎなのか。 いずれにしても、11・5新宿以降、女子の風景がどうなっていくのか興味深い。平井代表によれば、「これからも女子のカードは組んでいきます」とのこと。また、「誰にマッチメークをお願いするかなどは、アタマがパニック状態で考える余裕がまだありません。それでも、ジャガーさんには女子タッグ王者である以上は出ていただかないと。12・5後楽園では防衛戦をやっていただきたい気持ちです」とも。 11・5新宿で、ジャガーは何を見せ、何を伝えるのか。そして、「プロレス界引退」まで口にした新間会長の反応も気になるところである。 <写真/文:新井宏>
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