スーパーで米の棚がガラガラ…ある店、ない店の違いは?
「スーパーで米の棚がガラガラだった」。本紙「農家の特報班」に、埼玉県の女性から、そんな報告が届いた。最寄りの店で米がなくなっていたが、近くの別の店には普通に米が売っていたという。「どうして米がある店とない店があるのか」という投稿者の疑問の答えを求め、記者が実態を探った。 【図解】米の店頭販売量は仕入れ方法で変わる まず、記者は首都圏郊外のスーパー、ディスカウントストア、ドラッグストアに出向いて、売り場の状況を確認することにした。 7月下旬の調査で、対象地域にあったのは35チェーンの店舗。そのうち、米売り場の棚に空きが目立ったのは18店。このうち4店はほぼ米がなかった。 棚がほぼ埋まっている店は17店。ただ、そういう店でも、店頭に「入荷が不安定」「原料不足」といった表示があり、「1家族1点まで」などと購入数量を制限しているところが5店あった。
仕入れ方に違い
投稿した女性の指摘通り、売り場の品ぞろえに差が生じていた。なぜこんな現象が起きるのか。記者は、大手米卸に取材した。 担当者は「23年産の米が足りないことが背景にある」と説明。高温障害などの影響で精米時の歩留まりが悪いことに加え、米の消費量が伸びて不足感が強まっているという。 品ぞろえの違いが生じているのは、「米の仕入れ方法が関係している」と指摘する。小売店の米の仕入れは①事前に結ぶ売買契約②必要に応じて買い付ける都度買い──に大別される。現在は不足感から「多くの米卸や集荷業者は、小売店と結んだ事前契約の数量を守るのが精いっぱい」と明かす。 都度買いに回る米が少なく、事前契約の比率が低い店ほど、仕入れが難しくなっているという。
苦しい安売り店
さらに、この担当者は「安さを売りにしたチェーンが苦戦している印象がある」と指摘。安く米を販売する店は、仕入れ値も安く抑える店が多いという。米卸から見ると「利益率が低いため、取引先として優先順位が低い」と担当者。卸の在庫が逼迫(ひっぱく)している際は「安定した価格で取引している店を優先せざるを得ず、安売り店には米が回らない」と解説する。 実際、記者の調査で棚の空きが目立ったチェーンも、安さを売りにした店が多かった。 一方、売り場に米を並べられている店でも実情は厳しいようだ。 記者が調査した店のうち、米売り場が充実していた大手スーパーの担当者は「バイヤーが各地から米をかき集めて売り場を保っている状態」と打ち明けた。 このスーパーで扱う米は、米卸との事前契約がほとんどだが、見込みより米が売れていることで、担当者は「契約で仕入れた米だけでは足りなくなっている」と説明。「主食だけに切らすわけにはいかないが、かなり厳しい」と苦悩する。 南海トラフ地震の臨時情報が発表された8日以降、備蓄のため食品を買い求める動きが広がり、米の在庫不足に拍車がかかる可能性もある。交流サイト(SNS)では米売り場の品薄を報告する投稿が相次ぐが、調査で明らかになったように、近隣の別の店では普通に米を置いている場合もある。焦らず冷静な対応が求められる。 (金子祥也)
日本農業新聞