なぜStarbucksは、テレビ広告を1秒も流していないのに業績がいいのか?
2022年11月、内閣主導で「スタートアップ育成5か年計画」が発表された。2027年をめどにスタートアップに対する投資額を10兆円に増やし、将来的にはスタートアップの数を現在の10倍にしようという野心的な計画だ。新たな産業をスタートアップが作っていくことへの期待が感じられる。このようにスタートアップへの注目が高まる中、『起業の科学』『起業大全』の著者・田所雅之氏の最新刊『「起業参謀」の戦略書ーースタートアップを成功に導く「5つの眼」と23のフレームワーク』が発売に。優れたスタートアップには、優れた起業家に加えて、それを脇で支える参謀人材(起業参謀)の存在が光っている。本連載では、スタートアップ成長のキーマンと言える起業参謀に必要な「マインド・思考・スキル・フレームワーク」について解説していく。 【この記事の画像を見る】 ● SNSを情報を見つけてもらう プラットフォームとして活用する シェアドメディアとは、主にTwitter(現X)、Facebook、YouTube、InstagramなどのSNSを指す。情報を見つけてもらいやすくするためのプラットフォームとして活用できる。 最近は、YouTubeやInstagramなどの影響力が高まってきている。 今、人がネットで検索するとき、SNSもフル活用して検索するようになった。Twitter(現X)はGoogle同様に検索ツールとしても利用されていることがわかる。 1位 Google(33%) 2位 Twitter(現X)(31%) 3位 Instagram(24%) 4位 Yahoo!(12%) 『起業大全』図6-26参照 SNS時代は、下図のように、「シェアされるまでが活動」という傾向にある。 私たちは、何かしらの商品やサービスに興味を持つ。すなわちLike(L)がスタート地点になり、SNSで検索したり、あるいはウェブサイトで検索するなどして購買に至る。 昔はここで終わるか、せいぜい近隣の数人に口コミで広める程度だったが、今は、購買後に気に入った商品は気軽にSNSにアップでき、それがシェアされる大きな流れがある。 シェアされた商品やサービスが拡散され大きな話題になったら、特別な宣伝をせずとも購買に結びつく。うまくいけば、その効果は計り知れない。 ● 商品やサービスの特性に適した SNSを使い分ける またシェアドメディアは、商品やサービスの特性に適したものがある。 たとえば、コンテンツ系や知識系ならYouTube、コンサルティングや企画系の商材ならSlide ShareやSpeaker Deck、リピート商材ならLINE@が1つの目安になる。扱う商材によってどのシェアドメディアを使うかを考えたい。 Starbucks(スターバックス)の場合、テレビ広告は1秒も流していないが、それでも非常に業績が良いのは、広報とシェアドメディアの使い方が非常にうまいからだ。 Twitter(現X)のStarbucks日本公式アカウントのフォロワーは、約915万人(2024年12月現在)17)と圧倒的に多く、商品がTwitter(現X)上で話題になると予想の売上の2~3倍になることがある。的確なメディアを使えば効果は絶大だ。 今後は、コンテンツの伝え方やコンテンツそのものが細分化(ロングテール化)していってもAIの発達により、ユーザーは出会えるようになってくるだろう。1万人の薄いフォロワーよりも100人の濃いつながりのほうが、顧客獲得には利いてくる。 ただし、「とりあえず会社のアカウントを開設した」という行き当たりばったりで作るのではなく、SNSから企業サイトのオウンドメディアへ飛ばし、さらにランディングページへの導線を作るなど、全体の流れを見据えて、どのシェアドメディアが効果的かリサーチした上で始めるべきだ。 ● SNSで認知獲得から自社コンテンツへの流入を図り、 ランディングページに連れてくる導線を作れるか ターゲットのペルソナのカスタマージャーニーを描くと「ターゲットとなるユーザー」が、普段どこから情報を得ていて、誰から影響を受けているのかを明確にすることができる。 コンシューマー向けのプロダクトにおいては、SNSで認知獲得から自社コンテンツへの流入を図り、そこから、ランディングページに連れてくる導線を作ることがキーになる。 また今は、フェイクニュースなどが流行っているが、間違った情報が伝わらないようにするためにも、シェアドメディアを使う場合はオリジナル情報がユーザーに加工されないようにしたり、オリジナル情報に戻れるURLを記載するなど対策を講じておきたい。 17)Starbucksのフォロワー数 915万人(2024年12月現在) https://twitter.com/Starbucks_J (※本稿は『「起業参謀」の戦略書ーースタートアップを成功に導く「5つの眼」と23のフレームワーク』の一部を抜粋・編集したものです) 田所雅之(たどころ・まさゆき) 株式会社ユニコーンファーム代表取締役CEO 1978年生まれ。大学を卒業後、外資系のコンサルティングファームに入社し、経営戦略コンサルティングなどに従事。独立後は、日本で企業向け研修会社と経営コンサルティング会社、エドテック(教育技術)のスタートアップなど3社、米国でECプラットフォームのスタートアップを起業し、シリコンバレーで活動。帰国後、米国シリコンバレーのベンチャーキャピタルのベンチャーパートナーを務めた。また、欧州最大級のスタートアップイベントのアジア版、Pioneers Asiaなどで、スライド資料やプレゼンなどを基に世界各地のスタートアップの評価を行う。これまで日本とシリコンバレーのスタートアップ数十社の戦略アドバイザーやボードメンバーを務めてきた。2017年スタートアップ支援会社ユニコーンファームを設立、代表取締役CEOに就任。2017年、それまでの経験を生かして作成したスライド集『Startup Science2017』は全世界で約5万回シェアという大きな反響を呼んだ。2022年よりブルー・マーリン・パートナーズの社外取締役を務める。 主な著書に『起業の科学』『入門 起業の科学』(以上、日経BP)、『起業大全』(ダイヤモンド社)、『御社の新規事業はなぜ失敗するのか?』(光文社新書)、『超入門 ストーリーでわかる「起業の科学」』(朝日新聞出版)などがある。
田所雅之