トランプは威信を賭けてウクライナを停戦させる、「威信」こそがアメリカファーストの根幹だ
バイデン政権すらモスクワ攻撃を行う意志は持っていなかった以上、ウクライナには戦争以前の領土を確保するという勝利プランを実現する可能性はほとんどない。 プーチンは、一方でどんどん領土を広げ、ロシア系住民の多いヘルソン、ザポロージャを含む地域をロシア領にして、ウクライナをNATOに属さない中立の状態にするという方向で動くであろう。 ウクライナ戦争の終結がどうなるのかは、世界にとって大きな問題だが、トランプのアメリカ、ヨーロッパ、ウクライナ、そしてロシアとの関係で、まだまだ終着点が見える段階ではなさそうである。
なんといっても、ウクライナ戦争での敗北はアメリカの威信の敗北となりかねない。トランプはそうはしたくないはずである。 できれば、アメリカの威信でロシアとウクライナの戦争が終わり、ともにアメリカの命令に従ってそうなったのだという成果をあげたいはずである。 ■NATOはどう出るか しかしウクライナも、ロシアも引くに引けない状態であることは間違いなく、ウクライナは、最後はキーウまで占領されるところまで行き着いて海と国土の半分を失うことになるか、それとも完全消滅するか。
ロシアは、当初予定したロシア系住民の地域だけを手っ取り早く獲得し、ウクライナを中立化することで終わるか。これらはすべてNATOの出方次第である。 戦況から言えば、トランプ案はロシアにもウクライナにも譲歩を迫ることになるだけに、妥協可能な案かもしれない。しかしそうなれば、ヨーロッパがロシアという脅威に対し、自らの力で守り抜くしかない。となれば、困ることになるのはヨーロッパである。
的場 昭弘 :神奈川大学 名誉教授