トランプは威信を賭けてウクライナを停戦させる、「威信」こそがアメリカファーストの根幹だ
カマラ・ハリスは、トランプの中にこの問題の解決を期待する選挙民の心をつかむことはできなかった。要するに選挙は、カマラ・ハリスの選挙ではなく、バイデン政権と民主党への信任を問う選挙だったのだ。 トランプが移民制限、国内景気上昇とアメリカ第1主義を掲げた以上、ウクライナやガザなどに関わっている暇はない。またNATOに関わっている暇もないだろう。しかし、そのためにもアメリカの威信だけは失いたくない。 アメリカ経済は、アメリカの威信という裏付けがあって初めて成り立っているのである。そうである以上、ウクライナ戦争を早期に解決し、威信(軍事、経済、政治における力)を見せたいところである。
■アメリカの威信死守=アメリカ第1主義 アメリカ第1主義は、アメリカの威信第1主義でなければならないところに、重要な問題が隠されている。アメリカはIMF(国際通貨基金)体制、国連、WTO(世界貿易機関)を支える資本主義の基軸国であり、世界を支配し続けなければならないのだ。その限りにおいてアメリカ第1主義でなければならない。しかし、現実にはアメリカの威信は地に落ちている。 そう考えると、トランプの政策は、何においてもアメリカの威信を守ることである。
早速トランプは、ウクライナ停戦案を提示してきた。ウクライナ戦争を早期に解決できる手腕を示すこと、まさにこれこそアメリカの威信を守ることである。 戦後一極支配体制の中心国として君臨してきたアメリカは、世界の紛争を監視する警察官として、戦争や紛争を解決してきた。それが結果的に、アメリカを中心とする西欧社会の利益にもつながっていたのだ。 しかし、ベトナム戦争(1960年ごろ~1975年)という抜け出せない轍にはまったアメリカは、ベトナムとフランスの仲裁を買って出たはいいが、仲裁どころか戦争に巻き込まれ、敗北を喫する。
それ以降、アメリカはもはや仲裁国ではなくなり、自ら戦争当事国になり、世界の警察官ではなくなってしまったのである。 そうしたアメリカが一時的にも仲裁国としての威信を保てたのは、ソ連崩壊後の湾岸戦争(1990~1991年)とユーゴスラビア紛争(1991~2001年)の時期であった。しかし、21世紀になり、アフガニスタン、イラクなどにおいて、結果的に敗北を喫し、反西欧勢力を勢いづかせることになる。 まさにそのような中で起こったのが、2014年のウクライナ問題だった。