【米中対立の漁夫の利を得ていたベトナム】トランプ関税で後退か、それでも高い南シナ海での存在感
この変化の背景には、貿易黒字問題に加え、南シナ海問題に関するベトナムの「ぶれない対中姿勢」への高い評価があったものとみられる。今般、次期国務長官にルビオ上院議員が指名されたが、同氏は南シナ海問題に関連して、中国に対する厳しい言動を繰り返してきており、フィリピンおよびベトナムとの連携維持が期待される。
激化する南シナ海の米中対立
貿易黒字削減という観点からは、現在6割以上ロシアから調達している「兵器や防衛装備品の供給先」として米国があり得る。米国は、16年に武器の対越輸出禁止を全面解除したが、この分野における両国間の協力は既に開始されている。 例えば、米国はハイフォンの船舶訓練センターと無人航空機(UAB)6機をベトナム側に支援した。また24年から27年にかけて、ベトナム側が発注した練習機12機(パイロット訓練プログラムで使用)がベトナム人民軍に引き渡される。そのほか、米国産LNGや豚肉の輸入等も候補として検討されている可能性が高い。 いずれにせよ、次期トランプ政権発足後、南シナ海をめぐる米中対立は、一層厳しくなると予測される。米国が貿易だけでなく、安全保障分野でも、ベトナムとの協力を引き続き重視することが期待される。
岡崎研究所