【米中対立の漁夫の利を得ていたベトナム】トランプ関税で後退か、それでも高い南シナ海での存在感
資産運用会社ドラゴン・キャピタルのグエン所長によれば、「中国企業による投資はベトナム政府の厳しい監視に直面するだろう。製造業が中国からシフトし続けているため、ベトナムにはまだ多くの外国直接投資がくるだろう。関税リスクを緩和するために、ベトナム政府は輸出入の慣行を積極的に調整し、原産地規制の遵守を強化する可能性が高い」。 * * *
トランプも政権時に2度訪問
この記事が指摘している通り、ベトナム政府が、トランプ政権発足に備え、巨額の貿易黒字に関するリスク分析と対応策策定に努めているのは間違いない。 ベトナムは、トランプ前政権時代に貿易黒字削減に向けて強い圧力を経験し、様々な措置を講じてきた。ただし、23年の対米貿易黒字額は、17年当時の約3倍1040億ドルとなった。 特に輸出が増加しているのは、サムソンをはじめとする外国企業が生産するコンピューターやスマートフォンの電子機器、太陽光パネル、繊維製品等である。いずれにせよ、輸出製品に対して10~20%の関税が課されることとなれば、輸出減、雇用減も含め国内経済への悪影響が懸念される。 トランプ前大統領時代の米越関係を振り返ってみると、当時、トランプ大統領はあからさまに東南アジア諸国連合(ASEAN)を軽視していたが、ベトナムは2回訪問している。 1度目は17年11月のことで、トランプ大統領はアジア太平洋経済協力(APEC)ダナン首脳会議に出席後、国賓としてハノイを訪問し、首脳会談を行った。主要議題は、貿易黒字と南シナ海に関する安全保障分野の協力であった。 貿易黒字削減に関して、ベトナム側は、ボーイングジェット100機購入を約束した。安全保障分野では、首脳会談翌年3月に空母カールビンソンがダナン港に寄港、75年のベトナム戦争終結後、米国空母の初のベトナム寄港であった。 トランプ2度目の訪越は、19年2月ハノイでの第二回米朝首脳会談時で、米朝首脳会談前に米越首脳会談が開催された。 なお、17年5月、ASEAN首脳の中で一番初めにワシントンに招待されたのはフック首相(当時)である。その3年ほど前から、ホワイトハウスのベトナムへの関心が見違えるほど大きくなっていた。