面会交流の別れ際に泣きじゃくる娘…シングルファザー住職が明かす最も孤独を感じる瞬間
シングルファザーになった浄土宗・龍岸寺の住職、池口龍法さん。しかし、親同士で連絡をとるLINEグループにはママ友ばかりだし、面会交流のたびに子どもは泣きじゃくるしで、孤独感は増すばかり。そんな池口さんの日々を綴った『住職はシングルファザー』(新潮新書)より一部抜粋・編集し、シングルファザーの孤独感をお送りする。 【この記事の画像を見る】 ● ひとり親家庭の親の 圧倒的な孤独感 この記事を読んでくれている人のなかには、これから離婚を考えている人も少なからず含まれているだろう。経験者として忠告しておきたいのは、ひとり親家庭の親は、どこまでも孤独だということである。 どんなに疲れていても、山積みになった洗濯物を洗わなければいけない。子供たちに「ご飯まだ?」と言われれば、キッチンに向かわなければいけない。子供の教育方針も、お金の使い方も、すべて自分で決められるのは自由なのであるが、誰にも相談できずひとりで判断して責任を負い続ける恐怖のほうがはるかに勝る。さらにつらいのは、ひとり親家庭の前提として、子供が成人するまで、私はずっと元気でいなければいけない。このプレッシャーたるや半端ない。 でも、離婚する決断ができず、家庭内不和を抱えたままズルズル過ごしているのは、家族に良い影響を与えない。軌道修正して関係修復ができるならそれに越したことはないが、それが無理なら速やかに離婚したほうがいいと私は思う。家庭内が穏やかであるほうが、子供にとっても良いはずである。 そのために、親が孤独感に襲われながら暮らしていくのはもちろん過酷極まりないが、ひとり親家庭の親を経験すれば、孤独に対する耐性も強くなるだろう。育児も家事も仕事もすべてひとりで抱えるのはしんどいが、ハラハラドキドキのコメディの舞台だと思えば楽しめる。ものは考えようでなんとかなるのである。
● シングルファザーは シングルマザーより孤独? ところで、シングルマザーとシングルファザーを比較した場合、どちらが孤独だろうか。 離婚を経験していない人には「どちらも同じだ」と言われそうだし、シングルマザーからは「私たちの気持ちも知らないで勝手なことを」と厳しい眼差しを向けられそうだが、私はシングルファザーのほうが圧倒的に孤独だと主張したい。 なぜシングルファザーのほうが孤独かというと、ジェンダーギャップ指数が相変わらず先進国の中で最下位にある日本では、「会社で働くのが男性」「家で子育てするのは女性」という役割分担についての意識が根強く残っているからである。実際、子供がいる家庭が離婚する場合、男親が親権を持つのは全体の一割だといわれる。つまり、ひとり親家庭というだけでマイノリティなのに、そのマイノリティの中でもさらにマイノリティなのが、「シンパパ家庭」である。極端な言い方をすれば、世の中に「存在しないはずのもの」とみなされているとさえ言っていい。 このような偏見は、社会のいたるところにあって、不意に私の心をえぐってくる。 たとえば、ショッピングモールなどに出かけていく。トイレに行くと、女性用のトイレにはおむつ替え台があるが、男性用には備え付けられていないことがよくある。つまり、おむつを替えるのは母親だという暗黙の前提がある。ショッピングモールの経営者も、さっきすれ違った利用者もみんな、シングルファザーなど眼中にないという気がしてくる。