村田諒太は4.9埼玉で再セットされた世界最強ミドル級王者ゴロフキンとの歴史的ビッグマッチに勝てるのか…4か月延期の追い風
対ゴロフキンの基本戦略は、プレスとパワーだ。ゴロフキンは試合の前日に40歳の誕生日を迎える。驚異の40歳だが、プレス、パワー、スタミナの3つは、間違いなく村田が最強のミドル級王者を上回る部分。村田は「僕が詰めにいくと思う。その展開になる。彼がどう対応してくるか。ファイトプランはあるが、話したくない」とニヤっと笑った。 この4か月の間に見過ごせない動きがあった。 9月17日にゴロフキンと過去1敗1分けの現スーパーミドル級4団体統一王者のサウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)との3度目対決がDAZN主導で内定したのだ。もちろん、村田戦に勝つのが前提の計画である。 海外のボクシング通の村田は、むかつくどころか「できればいいねの段階でしょう。なんとも思わない。ボクシングあるあるです。そこへの感情の揺れはない。無ですね」と受け流した。逆にゴロフキンに絶対に負けられないというプレッシャーがかかる。 軽量級ではあるが、4階級制覇王者で現WBO世界スーパーフライ級王者の井岡一翔(志成)との統一戦が内定していた9度防衛の絶対王者、IBF同級王者のジェルウィン・アンカハス(フィリピン)が、“統一前哨戦”で負けたケースが直近にあった。しかも村田がゴロフキンを破る、衝撃的なサプライズを起こせば、ゴロフキンの代わりに村田が9月17日のカネロの相手に抜擢される可能性もゼロではない。 2年前にはゴロフキンよりも先に村田ーカネロ戦の実現が水面下で内定していたという経緯もある。本田会長も「ゴロフキンのカネロ戦が次に決まったことで世界の注目度がさらに高くなった。勝てば代役? どれだけのインパクトを与えられるかの内容次第」と、可能性を否定しなかった。 32年前には、田会長がプロモートを手掛けたヘビー級3団体統一王者、マイク・タイソンの東京ドームでのタイトル戦で無名のジェームズ・バスター・ダグラスにまさかのKO負けをす喫するという“世紀の番狂わせ”が起きた。”ヒノモトの国”には不思議な力がある。 今回の試合も12月29日に予定されていた試合同様に、地上波はなく国内は「Amazonプライムビデオ」で配信され、海外に関してはDAZNが配信する。ゴロフキンの10億円をはるかに超えるとされる巨額なファイトマネーは、DAZNの放映料でカバーするという画期的なビジネススタイルだ。 政府の指針に従い、さいたまスーパーアリーナでは、約2万人をフルに入れる予定で、32年前のタイソン戦は、米国時間に合わせて昼過ぎにゴングが鳴らされたが、今回は「ゴロフキンの試合は米国より欧州のファンに見られる」という事情があり、試合開始時間も日本時間に合わせた夜のプライムタイムとなる。 ゴロフキン側からの要求は、時差調整も含めて「10日前には来日したい」とのことで3月31日に来日予定。一行は14人ほどになるが、当初はチャーター機の利用まで検討されたという。都内の最高級ホテルのレストランのあるワンフロアのすべてが貸し切りとなり、スイートルームを数室確保、他の宿泊客は使えない専用エレベーターを使い、外出は調整練習をする帝拳ジムとの往復だけという“ボクシングバブル”を作る。 政府の指針が緩和されて隔離期間がなくなった分、滞在期間が短縮されるが、それでも2000万円強規模の経費をかけて万全のオミクロン対策を行い、歴史的なゴングの瞬間を待つことになる。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)