村田諒太は4.9埼玉で再セットされた世界最強ミドル級王者ゴロフキンとの歴史的ビッグマッチに勝てるのか…4か月延期の追い風
「ゴロフキンは強さの象徴であり紳士。ボクシングはエンターテインメントでもあり“勝てばいい、稼げばいい”と外に向くことが多いが、彼は、卑怯なことをしない、正直でルールを遵守するという内を向く強さがある。リスペクトできるし見習わねばならない。自分がボクシングを通して得たかった自己肯定感を再確認させてくれるのが、最高の選手であるゴロフキン。自己肯定感を持てないのなら、なんのためにボクシングをしてきたかわからない。彼のおかげで自分の内側と向かいながら彼に向かっていく状況を作れている。この試合でなにを得られるのか、終わったあとにどんな景色が見られるかわからないが、今過ごしている時期(の意義)が大きい。ここまで待ってくれた。そして常に目標でいてくれたことに感謝している」 村田らしく哲学を語った。 そのゴロフキンは文書で「日程がついに決まり嬉しい。村田は優れたチャンピオンだ。美しい国と世界中のボクシングファンの皆さんはワクワクするようなイベントを見ることになるだろう。リングに戻りビッグ・ドラマ・ショーを日本でやることが楽しみ」とのコメントを寄せた。 では、この約3か月強の延期は、村田にとって吉と出るのか、凶と出るのか。 精神面については、村田は、こう自己分析した。 「なぜ感情が上下するのかのメンタルのアドバイスをもらっていた。試合がなくなった喪失に対して、どんな状況でも頑張るんだという反発が、まず起きて、次に落ち込みがくる。これはスポーツ心理学でいえば、喪失に対するリアクションとして当然あるものだそう。自己理解を深められた。その上で今が作られている」 元アーティスティックスイミングの銅メダリストでメンタルコーチとして活躍中の田中ウルヴェ京氏のアドバイスを定期的に受けながらメンタルを整えた。モチベーションは最高潮で不安がないどころか逆にプラスだろう。 懸念されるのは肉体面と試合勘。本来ならば、鍛錬→試合→休養のサイクルで、肉体の強化にもメリハリができるが、ずっと緊張状態を保ちながら、追い込んできた影響がどう出るか。その疑念を村田にぶつけると「体への負担は大きい」と不安を口にした。 この2つは当日のリングに上がってみなければわからない部分ではあるが、こうも言う。 「僕は体重に苦労はしていない。上下動は関係ないし、調子の波とは違う部分で、いいものを作り上げている感覚はある。コンディションはいい」 むしろ延期によるプラス面に手応えを感じていた。 「一番大きかったのはスパーも含めて準備期間が十分にとれたこと。そのなかで気づいたこと、試していることがある」 新型コロナの影響でスパーリングパートナーの来日がギリギリとなり、12月29日の試合であればスパーリングの量も対策の時間も足りなかった。パートナーの2人のうち1人は、ゴロフキンのリズムや独特のフックの角度を真似て打てる”仮想ゴロフキン”で、村田は、あらゆる対策を講じることができた。 元WBC世界スーパーライト級王者で、帝拳ジム代表の浜田剛史氏も「完成に近づいている状況」と、村田の延期期間での成長度をこう説明した。 「村田はファイター。打ち合ったら強い。だが、相手は最強の選手ですからワンパターンでは通用はしない。そういった面で、いろんな練習ができた。その練習が試合で全部出るかはわからないが、やっておかないと出ない。対応力、出せる準備はできた」 数々のチャンピオンを育成してきた本田会長も「技術的には間違いなく以前の村田より上。いろんな練習ができた。期待できるいい状態ではある」と断言した。