明日大阪大会開幕…10年ぶり甲子園狙う東大阪大柏原に「大谷翔平伝説」に重なる“二刀流ドラフト隠し玉”の野村和輝あり!
伸び盛りの2年生時にコロナ禍の影響を強く受けている年代。野村自身も濃厚接触者として自宅待機を余儀なくされた時期もあったが、1学年上のキャプテンを訪ね、淀川の河川敷で練習を重ねるなど地道に体力強化に取り組んだ。 「他校に行ったシニアの同期にはサボっている人もいましたが、ここで差がつくと思い、頑張りました。プロに行く目標がありましたから。現時点での評価は大阪桐蔭の面々に劣っていますが、力では負けていません」 最も気になる打者には楽天の浅村栄斗を挙げた。日々、動画をチェックしているという。 「右方向に上手に打ちますし、右足にしっかり体重を乗せて軸回転で打つところとか、打ちに行く際の割れを参考にしています。それと左打者ですが、オリックスの吉田(正尚)選手も凄い。あんなふうに打率も残せる選手になりたいです」 投手としての理想像はオリックスの若きエース、山本由伸。「ストレートでどんどん押しているのがいい」と言う。 米大リーグの本塁打争いトップを走るエンゼルスの二刀流のスーパースター、大谷翔平について聞くと「プレーもプレースタイルも憧れます。右の大谷になれれば」と答えた。 土井監督が「こいつをプロに送り出したい」と決意したのが2年生の11月。汎愛との練習試合での衝撃の一発を目の当たりにしたときだ。校内の野球グラウンドのライトまでの距離は89メートルしかない。その10メートル後方に4階建てのビルの高さに匹敵する体育館があり、野村の放った打球は、その屋根を直撃した。 超特大の一発に大谷翔平が重なった。 実は、大谷も花巻東時代に、練習試合でこのグラウンドを訪れ、右中間方向に体育館にぶつける伝説の超特大アーチを放っている。野村の一撃には、その大谷の伝説アーチを蘇らせる衝撃があったのである。 「右打者の右方向。あの当たりを見たときに”こいつをプロに入れないとあかん”と思いました。大谷も、ここで右中間にとんでもない一発を放ったそうですが、あいつの当たりも伝説ですよ」 チームとしては、田中秀昌監督(現近畿大学硬式野球部監督)の下で初出場した2011年以来10年ぶり2度目の甲子園を目指すことになる。大阪大会の初戦は22日、かわち野―八尾北の勝者。 組み合わせに恵まれ、土井監督も「ビッグチャンスかも」と大会を心待ちにしている。 「投手力全体は弱いですが、打線はなかなか力があります。野村の体はプロ級にでかいし、打球が上がればスタンドに入ってしまいます。現時点で完成形。大会では3本、いや4本ぐらいは打ってもらわんと(笑)。投手としても完投する能力はあるし大事な試合は先発…かな」 師弟2人の運命を変えるかもしれない夏。履正社OBの土井監督は「僕もホームランを打った記事が大きく取り上げられ、それがプロへのきっかけになった。あいつも、そんなふうになってほしい。持っていれば、評価が高まり、ドラフトで指名されるでしょう」と愛弟子にエールを送った。 二刀流の逸材も「チームとしてできるだけ上を目指して、最後はお世話になった土井監督を男にしたい。その先はプロ。投打どっちも自信があります」と口元を引き締めた。 卒業生の常山幹太選手が東京五輪のバドミントン出場を決めて盛り上がる東大阪大柏原。もしプロ野球選手誕生となれば、元巨人の阿南徹、現巨人の石川慎吾以来3人目となる。 “隠し玉”野村和輝の最後の夏がいよいよ開幕する。 (文責・山本智行/スポーツライター)
【野村和輝(のむら・かずき)】2003年(平15)6月7日生まれ、大阪市出身。大阪市立榎本小4年時にポルテ今津スクールで野球を始め、小6時にボーイズリーグ八尾ベッカーズ 。大阪市立今津中では大阪中央リトルシニアに所属し、4番・三塁手。東大阪大柏原では1年夏からベンチ入りし、秋は5番で投手兼三塁手。182センチ、90キロ。右投右打。遠投120メートル。料理が得意。