コウメ太夫「僕みたいな自虐をしてほしくない」シングルファーザー歴15年の子育て術 #家族とわたし
顔が白くなってるのもパパだし、そうじゃないのもパパ
――コウメ太夫さんは近年再ブレイクされて忙しくなったと思いますが、お子さんにはどんなタイミングでご自身のお仕事について説明されたんですか。 コウメ太夫: 仕事の内容を説明したことは多分ないんですよ。子どもから聞かれたことも多分ない。ライブ会場で着替える場所がないときに、家で化粧して、そのまま白塗りで車に乗って出かけることもあって、そういうのを見て育っているんですよね。だから、顔が白くなってるのもパパだし、そうじゃないのもパパっていうように、いつの間にか当たり前になっていましたね。 昔、近場の営業におばあちゃんと一緒に子どもが見に来たことがありました。たしか電器店だったと思うんですけど、出番が終わって僕はまだ白塗りのコウメ太夫の格好だったのに、子どもは気にせずにそばにやってきて「パパ、おもちゃ買いに行こうよ」って手をつないできました。そのままはちょっとまずいので、「いや、今はダメだよ。後で、後で」って言いましたけどね(笑)。 ――反抗期を迎える年頃に、お子さんとのコミュニケーションで悩まれたことはあるのでしょうか。 コウメ太夫: 話せば理解してくれる子なので、そんなに揉めたことはないですね。ただ、僕はどこ行ってもナメられるんで、家で子どもにもそう思われたらまずいと感じまして、ビシッと対応しています。「パパだぞ」っていうのをやっとかなきゃいけないと自分の中で決めたんです。だから、僕の言うことはすごく素直に聞きますよ。おばあちゃんには甘えているような気がしますけどね。
自虐をしてほしくないからこそ「ああしろ、こうしろ」とは言いたくない
――お子さんを育てる中で、気をつけたことはありますか。 コウメ太夫: あまり「ああしろ、こうしろ」とは言ってないと思います。とにかく「やりたいって思うことはやりなさいよ」っていう育て方をしてますね。あとは「人に迷惑かけちゃうようなことはやっぱりやめましょうよ」っていうぐらいですね。 というのは、僕自身が親にすごく「勉強やれ」って言われてたんですよ。親戚にお医者さんとか学校の先生とかが多かったし、当時はいい大学に入った人は人生が安泰だという風潮もあったじゃないですか。だから、小学校から家庭教師も4、5人はつけられたと思います。でも、全然、勉強できないんですよ。窮屈だし、先生に分からないことをずっと「分かれ」って言われて、それで分からないと「お前、アホだよ」とも言われて。そんなことを繰り返しているうちに、自己評価がすごく下がって、自虐ネタが多くなっちゃった。それで今、コウメ太夫やってるわけですからね。だから、子どもにはあまり物を言う立場じゃないと思っているんですよ。言い過ぎると、僕みたいなっちゃうのかなって、どこかで思っちゃうんですよね。 ――とはいえ、子どもはゲームやスマホなどに夢中になりすぎるケースもありますよね。ルール作りなどはお話しされたことはありますか。 コウメ太夫: 中学校に入ったときがちょうどコロナの時期で、学校から「リモート授業をやるのでスマホを用意してください」って言われて渡しましたね。彼は将棋が好きで、オンラインで対戦できる将棋を見つけてやっていました。それで「ほらパパ見て!何位になった!」って見せてきたこともありました。将棋ならいいんじゃないかなと思ってやらせてましたね。そこから、実際の将棋サロンに行って、大人と対戦したこともありました。 以前、僕と同じ事務所の芸人がゲーム機をくれたことがあって、それを一時期手放さなくなったことはありましたね。勉強をしなくなってしまって注意しました。でも「そんなにやりたいんだったら、やってもいいけど、とことんやって、プロゲーマーになる?」と聞いてね。しばらくしたら、そこまではやらなくなりましたね。 ――お子さんは17歳。そろそろ大学受験のことも考え始める時期ですよね。 コウメ太夫: 彼がどこに行きたいとか、将来何をしたいかは聞いてはいます。今は数学をやっていきたいというようなことを言ってますね。先のことがどうなるかはわからないですけど、塾や学校の先生にお話を聞いて、その中でどうしていくのかって感じだと思いますね。僕と違って、数学が好きで、ずっと勉強をしていて学校の特進コースに入るような子なんです。 ――コウメ太夫さんと同じように、シングルファーザー・シングルマザーとして子どもを育てている人も少なくありません。 コウメ太夫: 子育ての悩みは人それぞれですよね。だから、これがこうだって言い切るのは難しいと思うし、僕から何かアドバイスできるようなことはないです。ただ、僕自身は愛情を持って接することが大切じゃないかなとは思いますね。あとは子ども自身がやりたいことは好きなことなんでしょうから、悪いことじゃなければやらせてみて、能力を伸ばしていってくれたらいいんじゃないかなって考えていますね。 ----- コウメ太夫 1972年、東京都生まれ。芸人。22歳で梅沢富美男劇団に入団するも、1997年に芸人へ転向。2005年、お笑い番組『エンタの神様』への出演をきっかけに大ブレイク。番組終了と共にテレビ出演が減ったものの、X(旧Twitter)の投稿「#まいにちチクショー」を通して再ブレイク。バラエティー番組のみならず、MVやテレビドラマにも出演するなどマルチに活躍する。 文:田中いつき (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました) 「#家族とわたし」はYahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。ひとり暮らしの単身世帯が過去最多となり、生涯未婚率も上昇するなか、家族のかたちは多様化しています、また、介護や育児、親子関係など、現代の家族が直面する問題も多岐にわたります。旧来の家族観が変化するなか、「家族」とは何なのか、どうあるべきなのか。さまざまなエピソードや課題をもとに、ユーザーと考えます。