「ハンバーグを知らず何を聞いても無言の子に絶望したことも」不妊治療を経て里親になった女性「35歳の私が最年少だった」
── それはなぜでしょうか? 岩朝さん:特別養子縁組を待っている人があまりにも多いからです。希望する人が何千組といます。でも、年齢のハードルが高い。たとえば、43歳の人は1年待つと44歳になりますが、その間に40歳の人が登録した時点で40歳の人が優先的に特別養子縁組へと進むことがめずらしくありません。年齢を重視するのは、子どもにとって将来のリスクがないからです。特別養子縁組は、子どもがほしい夫婦のためではなく、子どものための制度だから。親が育てられない子どもの第二の人生を、国の制度で新たな親との生活を始めてもらうためのものなので、できるだけリスクのない夫婦が選ばれるんです。
■「私の人生にはママがいるから大丈夫」 ── 岩朝さんは現在、里親として女の子と一緒に暮らしているそうですね。今は17歳とのことですが、反抗期などは? 岩朝さん:4歳のころから一緒に暮らしていますが、反抗期はまったくないです。小学5年くらいのころが一番大変でしたが、言葉で穏やかにコミュニケーションが取れるようになってからは何も困ったことはありません。 結局、子どもを変えようと怒鳴ったとしてもどうしようもないんですよね。大人の私たちが自分をコントロールするしかなくて、子どもがどんなに剛速球の言葉を投げてきて、「痛ったあ!」と自分の気持ちが凹んでも「どうしたのー?」ってゆるやかに返してあげるくらいの余裕があるボールを投げてあげたい。同じ勢いで打ち返してしまったら、傷つけあうことになると思うんです。
ちなみに、うちの子は、昨年から実の親との面会を始めたんです。一時期は母親への復讐心の塊のような状態だったけれど、今はすべてを許して、「親も大変だったんだろうなあ」と話しています。「今の私の人生にはママがいるから大丈夫」って私に言ってくれていますね。 ── お子さんがそう言えるようになるくらい、岩朝さんが日々、愛情で包んでこられたんですね。 岩朝さん:子どもが実の親との最初の面会を決めたとき、私が「本当に会っていいの?もう恨みはないの?」と聞いたんです。そうしたら、「不思議かもしれないけれど、私は今、恨みとかコンプレックスとか何ひとつないよ。ママが言ってくれたことをずっと覚えているから」って答えてくれて。