「東洋の宝石」ヒスイ活用、日本が最古級…第76回正倉院展出展の勾玉にも
「東洋の宝石」とも呼ばれ、古くから重宝されてきたヒスイ。活用の文化は日本が最古級とされ、奈良国立博物館(奈良市)で開催中の「第76回正倉院展」(11日まで)に出展されているたれ飾り「金銅杏葉形裁文(こんどうのぎょうようがたさいもん)」では、白や緑のヒスイの勾玉(まがたま)が彩りを添えている。この鉱物がどう誕生し、活用されてきたのかを探った。(松田俊輔)
緑以外にも白、紫、青、黒、オレンジ…
ヒスイはエメラルドとともに5月の誕生石として知られている。その正体は「ヒスイ輝石」と呼ばれる鉱物で、ナトリウム、アルミニウム、ケイ素、酸素で構成されている。 ヒスイと聞いて多くの人が思い浮かべる色は、緑だろう。ヒスイの漢字表記は鳥のカワセミと同じ「翡翠」で、羽や体の美しい緑色などに由来しているとされる。 しかし、実際は、緑以外に白、紫、青、黒、オレンジなど様々な色があり、含まれる不純物の種類と量で色が決まる。緑はクロム、青はチタンが関係しているといい、東北大の辻森樹教授は「不純物のないヒスイは真っ白だが、宝石としては透明感のある緑がかった石の方が人気が高い」と説明する。
高温高圧の地下
ヒスイはどこでどのように作られるのか。地質に関する博物館「フォッサマグナミュージアム」(新潟県糸魚川市)の小河原孝彦学芸員は「約5億年前以降、地球の地下深くで作られた」と解説する。 〈1〉熱水に含まれる成分が結晶化する〈2〉曹長石と呼ばれる別の岩石が分解する――の二つの仕組みで作られる。いずれも高い温度と圧力が必要となる。 陸の岩板「大陸プレート」の下に「海洋プレート」が潜り込む「沈み込み帯」で生成し、別の岩石「蛇紋岩」に取り込まれながら、長い年月をかけて地表付近まで移動してきたと考えられる。 5億年より前の地球の地下は熱すぎるため、ヒスイは生成されなかったという。 まれに宇宙で作られるケースもある。東北大などのチームは2014年、ロシアに落下した隕石(いんせき)から、ヒスイを発見したと発表した。宇宙で天体同士が衝突して隕石が生まれた際、3万~12万気圧の「超高圧」となり、生成したとみられるという。