熱中症対策と大容量化の先駆者 「ポカリスエット ボトル」1985年4月1日発売【食品産業あの日あの時】
各種スポーツイベントや大学・高校の運動部、スポーツクラブなどでのサンプリングを通じて大塚製薬は、「ヤングの一回の飲用量は大幅に増量している」ことを把握していた。そこで満を持して投入したのが大容量の「ポカリスエット ボトル」だった。高さ186mm、広口のビンに同社の看板製品「オロナミンC」同様のマキシキャップを採用。カン製品(245ml)の2倍以上の量が入り、価格は1本200円だった。広告に起用されたのは俳優の舘ひろし(当時35才)。それまでの「ポカリスエット」のCMとは一線を画す舘の起用は、大塚製薬としてはブランド認知を高めてくれた石原裕次郎への恩返しの側面もあったのかもしれない(舘は1983年から石原プロモーションに所属している)。 CM中では大型ボトルを手にした舘が、「部屋は乾いている。カラダの水分ニュートラルに。」のキャッチコピーとともに「ポカリスエット」をゴクリ。季節を問わず、屋内でもこまめに水分補給することの重要性を訴求した。まだ「かくれ脱水」という言葉すら生まれていない時代のことだ。アダルトな魅力の漂う舘のCMに加え、各社との商戦を経て築かれた強固な販売網により、「ポカリスエット ボトル」は発売1年で瞬く間に1億本の出荷を達成する大ヒット商品となった。 舘はその後1988年まで「ポカリスエット ボトル」のCMに出演し続け、ドラマ『あぶない刑事』(1986年~)でも舘演じる鷹山刑事が「ポカリスエット ボトル」を飲むシーンがたびたび盛り込まれた。こうして「ポカリスエット」は1987年にはブランド全体で累計30億本、1993年には累計100億本(ともに340ml缶換算。「ポカリスエット」ブランドサイトより)の販売を達成。日本コカ・コーラも追随して自販機でも販売可能な490mlビンの「アクエリアス」を投入したが、「ポカリスエット」の牙城は揺るがなかった。 1996年、飲料業界の小型ペットボトル自主規制が解除されると、消費者用の容器の主流は軽くて持ち運びに便利な500mlサイズのペットボトルに移行。「ポカリスエット ボトル」をはじめとしたガラスビン製品は店頭や自販機から少しずつ姿を消していった。だが2022年に大塚製薬が「ポカリスエット リターナブル瓶」(250ml)を発売した際には、「ポカリスエット ボトル」を連想するファンも少なくなかった。大容量飲料の先駆者は、人々に今も鮮烈な印象を残しているようだ。 【岸田林(きしだ・りん)】
食品産業新聞社
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