田家秀樹語る、吉田拓郎がアルバムで自らライナーノーツを書く意味
音楽評論家・田家秀樹が毎月一つのテーマを設定し毎週放送してきた「J-POP LEGEND FORUM」が10年目を迎えた2023年4月、「J-POP LEGEND CAFE」として生まれ変わりリスタート。1カ月1特集という従来のスタイルに捕らわれず自由な特集形式で表舞台だけでなく舞台裏や市井の存在までさまざまな日本の音楽界の伝説的な存在に迫る。 【画像】吉田拓郎、1970年代のライブアルバム 2024年6月の特集は、「吉田拓郎とROGUE」。前半の2週は吉田拓郎のアルバム『Another Side Of Takuro 25』、後半は先月発売になったROGUEの6枚組ボックスセット『ALL TIME SELECTION ROGUE 60』を渡り掘り下げていく。 田家:こんばんは。FM COCOLO「J-POP LEGEND CAFE」マスター・田家秀樹です。今流れているのは吉田拓郎さんの「冷たい雨が降っている」。6月12日発売の拓郎さんのアルバム『Another Side Of Takuro 25』からお聴きいただいております。オリジナルは1978年11月に出た2枚組アルバム『ローリング30』ですね。今日の1曲目はこの曲です。 冷たい雨が降っている / 吉田拓郎 Disc1の1曲目が「どうしてこんなに悲しいんだろう」でした。Disc2の1曲目が、アルバム『ローリング30』の中の「裏街のマリア」なんですね。両方とも作詞が松本隆さんです。『ローリング30』は拓郎さんと松本さんががっぷり組んだ名盤の2枚組です。彼の書いた全曲のライナーノーツもこの「冷たい雨が降っている」のところでは、やっぱり松本さんとのことが書かれていますね。箱根のスタジオで合宿をして、その場で詞も曲も書いたアルバム。そういうアルバムとしては知られていますけども、なんでそうなったのか。そして、松本さんとはどんなお付き合いだったのかというのを明かしていますね。『ローリング30』は忘れられないアルバムだったと結んでおります。 拓郎さんは若い頃は自分の作品をあまり語らない人でした。それがいろいろな人たちが自分たちの思い入れで拓郎像というのを書いたり、しゃべったりして、それがある種のイメージになってひとり歩きをしてしまった。拓郎さんにとってはそれは本位じゃなかったんだろうなというのが、最近わかりますね。2018年にベスト・アルバム『From T』が出ているんですけども、それも自分で選曲をしてライナーノーツを書いていました。自分の曲は自分で語る。自分の生涯は自分で伝えていくんだと決意された、そんな時期でしょうね。この『Another Side Of Takuro 25』はその続編という印象です。でもアナザーサイドですからね。思いがけない曲もたくさん入っております。Disc2の3曲目です。 夜霧よ今夜もありがとう / 吉田拓郎 Disc2の3曲目「夜霧よ今夜もありがとう」。石原裕次郎さんの1967年の曲ですね。この曲を知らない人はいないくらいに誰もが知っている曲でしょうが、作詞作曲が浜口庫之助さんだということはわりと知られてないのかなと思いました。浜口さんは元ジャズ・ミュージシャンでハワイアン歌手。マイク眞木さんの「バラが咲いた」の作詞作曲としても知られております。拓郎さんが尊敬する作曲家として必ず名前を挙げていた人ですね。 このテイクは1977年のカバー曲、セルフカバー曲を集めたアルバム『ぷらいべえと』の中に入っていたのですが、拓郎さんはいろいろな記録を持っていますけども、カバー・アルバムとして初めてアルバムチャート1位を記録したのが、この『ぷらいべえと』なんですね。しかも2週間1位だった。フォーライフ時代の拓郎さんのアルバムで、最も売れたアルバムがこれだった。この曲のライナーノーツには2024年現在でもこのテイクを聴いている、先週ちょっと話に出た就寝用のiPod、それにも入っているんだ、ギターの青山徹さんとサックスのジェイク・コンセプションとのソロバトルを絶賛しておりました。