上島竜兵の妻・広川ひかる「“心のお守り”を持っておけば前向きに生きられる」1年半経って思うこと
「自分を甘やかす日をつくろう」不安定な世の中で生きていくために
――改めて、広川さんにとって上島さんはどんな存在でしたか。 広川ひかる: 本当に自分勝手な人でした。スケジュールを教えないでハワイのロケにも行っちゃう人だし、飲みに行って帰ってこないという人だったので、すごく驚きましたね。自分勝手な人に振り回されてしまったっていう、そういう腹立たしさみたいなものもあるんですけど、でもやっぱり彼はいるだけでおもしろいんですよね。 ゴキブリとか、ベランダに入ってきたセミとかにおびえて「キャーっ!何とかして」って騒いで、「何とかして!ヒーチャン!」とかって言ってる姿がもうおかしくて、おかしくて。怖がって飛び上がってるのとか、本当にいいリアクションしていました。「頼りになんない亭主ね」なんて思わないんですよ。そういうところ全部が面白かったから。「大丈夫、大丈夫」って言って、何でも私がやってあげてました。 M-1とかもよく一緒に見てましたね。2人で「このコンビはこういう感じがいいね」とか、「ちょっとツッコミが弱いよね」とか言い合ってみたり、「いや、今こっちが負けちゃったけど、こっちの子の方がちょっと華があるよね」と言ったりとか。大喜利番組を見ながら2人で一緒にやることもありました。そういう時間がすごく楽しかったですね。 ――今はどういった心境ですか。 広川ひかる: 感情って一つじゃないし、整理もつかないんですよね。「竜ちゃんのばかやろう」って思うこともありますけれども、「竜ちゃんごめんね」って思うときもあるし、「竜ちゃん、ありがとう」って感謝する日もあれば、「本当、頭にくるなぁ」っていういろんな感情の中で生きているから、ちっとも整理なんかつかない。 自分で骨壺も選んで、葬儀も全部やったんですけど、それでも「竜ちゃん、どこに行っちゃったんだろう」っていう感覚はずっとあるんですよ。毎日お墓参りにも行っているんですけれど、そんな感覚があります。 ――つらい思いをしている人や、そういった人を支えている人もたくさんいると思います。広川さん自身はこれからどう生きていきたいですか。 広川ひかる: こういう不安定な世の中だと、竜ちゃんのように病んでしまう人もいれば、私のように遺族になってしまう人もたくさんいると思うんですよね。今、周りにそういう人がいないっていう人は少ないと思うんです。 真面目で鬱(うつ)になっちゃうような人って、多分自分のことを甘やかすことができないんだと思うんです。心を強く持ってほしいけど、そんな強い人間ばっかりじゃないですから。私は知り合いのマッサージ師さんが「もし、すごい疲れちゃったら来てね。癒してあげるから」って言ってくれていて。それがお守りになっています。大変だったらそこに行けばいいんだというものができて、すごく嬉しかったんですよね。だから、皆さんにそういう何かお守りを、心のお守りを見つけてほしいと思います。例えば、「この音楽を聞いたら、私は元気になれる」「私はこれを食べたら元気になれる」みたいなお守りを自分で一つ作っておくといいですよね。セルフ甘やかしデーみたいなものを作るのもありですよね。私もそうしています。おいしいものを食べたり、週末だけはお酒を飲んじゃったりとかね。 本を読んだ方からは「励まされました」って長文のメッセージをいただくことがあるんですが、私はそれにも励まされています。「そうか、私でも役に立つことがあるんだな」と思える。だったら、上を向いて、前を向いて皆さんと一緒に元気になっていこうという思いにもなっています。 竜ちゃんと生きた人生はとっても楽しかったですけれど、最後ちょっと悲しいことになってしまった。自分が命を全うするときに「竜ちゃんのせいでつまらない人生だった」って言って終わりたくないんですね。竜ちゃんもそんなふうに思ったまま私が向こうに行って会ったら、がっかりするだろうなと思うので。「そっちに、もっといれば良かった」って、竜ちゃんが思ってくれるぐらい楽しみたい。応援してくれる、周りに寄り添ってくれる人たちにも申し訳ないので、楽しんで明るく生きていきたいと思います。 ----- 広川ひかる 1970年、埼玉県生まれ。本名 上島光。ものまねタレント。1988年、フジテレビ系「発表!日本ものまね大賞」にて優勝し、芸能界入り。94年に上島竜兵さんと結婚。ものまね番組や情報番組のリポーターなどで活動。近著に上島竜兵さんとの思い出などを描いた『竜ちゃんのばかやろう』がある。 文:田中いつき (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました)