LGBTQ+差別に対処する「仕組み」スウェーデン・ドイツ訪問記──連載:松岡宗嗣の時事コラム
差別禁止法があると、被害を受けた場合にどんな対処がされるのか。 例えば、ある妊娠したトランスジェンダー男性(法的な性別も男性に変更)が、WEBサイトから妊娠保険に加入しようとしたところ、マイナンバーに性別情報(男性)が紐づいている関係で申請ができなかった。電話で問い合わせたところ、男性には保険は適用されないという理由で断られてしまった。この当事者が訴えたところ、最終的に会社側は差別だったと謝罪し、結果的に保険に加入できたという。 他にも、レズビアン女性が病院で生殖補助医療を受けようとした際のケースが紹介された。 この女性は病院から約400万円の費用がかかると言われてしまう。しかし、異性愛者の場合はその10分の1ほどの費用で済むことから、差別だと訴えたところ、病院側は「男女のカップルの場合は、なんらかの病気によって自然に子どもが産めない。だから費用が低いのだ」と説明。しかし、裁判所はこれを間接差別だと認定し、病院側は女性に賠償金を支払った。 学校でのケースも紹介された。 ある学校で、生徒が「彼(han)」でも「彼女(hon)」でもないジェンダーニュートラルな人称代名詞「Hen」を使ってほしいと先生に伝えたが、教員はこれを拒否。学期中、本人の性自認が尊重されなかったことについて生徒側が訴えると、教員の行為はハラスメントと認定され、学校側は生徒に賠償金を支払うことになった。 差別禁止法は、「個人対個人」ではなく、あくまで企業や行政などの「組織対個人」のケースに対処する。そのため、前述の事例のように、学校の教員個人に賠償が命じられるのではなく、学校側にその責任が科される。 どのケースも最後は「(行為者側から)お金が支払われました」という結論だった。もちろん金銭によってすべてが解決するわけではないが、法的な根拠があることで行動の責任が問われ、一定の救済がされるという点が重要だと感じた。