s**t kingzが次世代へ繋ぐ、希望と興奮
日本のダンスシーンにおいて未知なる領域を開拓し、次世代に夢と可能性を与え続けている4人組ダンスパフォーマンスグループ、s**t kingz。次に彼らが仕掛けるのは、SNSから多くの人の耳をキャッチし現場ではこれまでにない種類の熱量を生んでいる新世代3組とのコラボレーション。「s**t kingz feat. edhiii boi, ぺろぺろきゃんでー, JIMMY(PSYCHIC FEVER)」として楽曲「MORECHAU」を完成させた。誰かの言葉、世の中の風潮、メディアやSNSプラットフォームの上で「踊っているのか? 踊らされているのか?」――今の時代の心の揺れ動きを、巧みに、可笑しく、表現し尽くす。 【写真を見る】s**t kingz、edhiii boi、ぺろぺろきゃんでー、JIMMY(PSYCHIC FEVER) s**t kingzが切り拓いた道 ダンスシーンとSNSに思うこと ーs**t kingzは下の世代のダンサーに新たな選択肢を増やしてくれている開拓者で、「ボーカリストを招いてオリジナル曲を作る」ということもそのひとつだと思います。そもそも2020年から、「見るバム=見るダンス映像アルバム」と題して楽曲制作の企画を始めた理由について聞かせていただけますか。 shoji それまでは世の中にある音楽に踊りをつけて発表していたんですけど、著作権の問題とかで、作品を世に出せなかったり残せなかったりすることがすごく多かったんです。コロナ禍で、アーティストの方々はライブ映像の無料開放とかをしていた中で、自分たちは「みんなに少しでも元気を与えたい」と思っても権利的に自由に扱えるものがなくて。「このまま行くと、自分たちは何も世の中に残せないんだ」と思って、それはやっぱりすごく寂しいなと。自分たちが作っているダンスのエンターテインメントが、100年後の子どもたちも当たり前に見られるものであってほしいという想いから、素晴らしいアーティストの皆さんと一緒に音楽を作らせてもらって、そこに踊りを乗せて届ける活動を始めました。 ーそれをやろうとした時、ヒントとなったダンスグループなどはいましたか? shoji そういうものはなかったんですけど……他の人がどうというよりも、とにかく自分たちがかっこいいと思う音楽を作りたいという想いでした。誰かモデルがいたわけではないですね。 ーなぜそんな質問をしたかというと――今はGANMI、Dr.SWAGなどボーカリストを入れてオリジナル曲を作るダンスグループが少しずつ増えていますけど、やはりs**t kingzこそが先駆者であったということですよね。 kazuki 昔から著作権問題みたいなものはなんとなくあって。たとえばダンスコンテストがDVD化される時も、全部差し替えられるじゃないですか。その曲に合わせて振付を作っているのに、ちょっと似ているだけで全然違うトラックになって世にばら撒かれるのは嫌だなって、みんなどこかで絶対に思っていたんですよね。ただその解決方法に辿り着くことがなかった中で、「これだ!」っていう。しっかり自分たちでこだわってトラックに合わせた振付を作る、というよりむしろ「こういうダンスがしたいからこういう曲を作ろう」というところから始まって、誰にも邪魔されずにそのまま世の中に出せる、残せることは本当にデカいし、やっぱりそれはみんなやりたがるよなって思います。 ー(大きなリアクションをとっていたedhiii boiに対して)edhiiiさん、今の話を聞いてどう思いました? edhiii boi びっくりしました。僕ももともとダンサーだったんですけど、逆に僕はSNSが完全に普及された時代に生まれているので(2007年生まれ)、たとえばInstagramに個人的に載せたりするのは自由で。今、ダンサーとアーティストの距離がすごく近くなっていると思っていて、今回のプロジェクトに参加させていただけたこともすごく嬉しいですし、今後またいろんなプロジェクトができたらもっと面白い時代になっていくんじゃないかなと思います。 ーダンサーがアーティストとして扱われるようになったことも、s**t kingzの功績や貢献が大きいと思うんです。 Oguri 音楽を作るとフェスや音楽番組に出させていただけるようになって、「ダンサーとしてこんな場所にも立てるんだ」というような経験がどんどん増えていきました。初めてフェスに出た時は既存曲を使って舞台に近いパフォーマンスをやったんですけど、最近はお客さんと一緒に盛り上がって踊る「ライブ」ができて、自分たちならではの楽しませ方を見つけられている気がします。 NOPPO ダンサーって、メディアとかでも色物として使われることがあるんですよ。「頭で回れるんですよ」とか、そういう機会が多かったりして。それはそれで入口としては絶対にいいと思いますし、ダンサーとして盛り上げるためのひとつではあるんですけど、そうじゃなくて、ちゃんとアーティストとして見られるきっかけとして「音楽」という活動は大きいなと感じます。最近は「もともとダンサーだったけど、アーティストになった」という人も増えてきたし、それが当たり前になってきていて、環境が変わってきているような気もします。 shoji 本当に僕たち、ちょうどいろんな時代の転換点にいたんですよ。s**t kingzを組んだ時にYouTubeが盛り上がり始めて、海外の人たちが動画を見てくれて、それがきっかけで海外に呼んでもらっていろんな国でダンスすることができて。「自分たちの音楽を作って音楽番組に出ました」「自分たちの音楽があるからこそライブができるようになりました」「だから武道館で初めてダンサーとしてワンマンができました」とか――いろんな時代の転換点があって、その中でダンス&ボーカルグループが増えてきたり、TikTokやSNSでダンスというものがみんなにとって身近になったり。いろんなタイミングが合っているところで活動をさせてもらっているので、すごくいい時代に生かせてもらっているなと思ってます。 ーそれこそYouTubeを早い時期から活用していたs**t kingzの皆さんは、今TikTokやSNSと向き合いながら切磋琢磨しているこの3組を見てどんなことを思いますか。 kazuki 僕は個人でYouTubeをやってますけど、ただやっているだけで戦略とか何もないですし(笑)。俺らは見ていただけで、いまだに全くうまく使えてないんですよ。 shoji 自分たちでYouTubeをやっていたというより、自分たちが踊ってるのを勝手に誰かが載せてくれて、それをきっかけにいろんな人が知ってくれたので(笑)。 kazuki 今の若い子たちって、実力プラスそこの頭のよさや知識が必要になってくるから、広がりやすい世界に見せかけて、逆に入り込むのが難しいんだろうなって思います。SNSをやればいいわけではなくやっていて当たり前な中で、実力もありつつ、みんなに惹かれる魅力もありつつ、なおかつSNSの使い方がうまいっていう、全部揃ってないとダメじゃないですか。僕らはそういう時代じゃなかったので、逆にラッキーではありました。だから御三方は本当にすごい。授業開いてほしいです(笑)。 shoji 歴代の音楽が全てアーカイブ化されていてすぐに聴ける時代に、新しいものを作り続けなきゃいけないっていうのは――音楽作ってる人たちって、今が一番大変なんじゃないですか? でもだからこそ、波に乗っている人たちは本物なんだろうなって。ちゃんと自分たちの音楽をやってる人たちだと思うので、かっこいいなと思います。 edhiii boi ちょうど最近JP THE WAVYさんのライブを見て――多分あの方って「バズる」とか考えずに、単純に自分のやりたい音楽とか自分が楽しくてブチあがる曲を作っていると思うんですよ。それであれだけヒップホップリスナー以外の若い子たちにも知られていて、ライブでもブチあがり方が全然違って、しかもコーチェラとか海外にも出られていて。研究する部分もありつつ、自分を信じて、ちゃんと自分を持ち続けていくことが大事な法則なのかなって改めて思ったところでした。 kazuki 「MORECHAU」のテーマに結びつくところですよね。SNSの使い方、SNSに合わせた曲作りとかも、それはもしかしたら見えない糸で操られているのかもしれなくて。「本当に自分はそれをやりたいのか?」と聞かれた時にちょっとウッとなるというか。でも、そこで流行ることが自分のやりたいことではあるっていう。みんながその絶妙なラインを生きてる時代だよなって感じます。