「『サイギャップ』なんて言葉はじめて知った…」ダヴのルッキズムに意義を唱えるキャンペーンは「逆効果」? 「啓発キャンペーン」が悪手となった根因
この動画には賛否両論あったが、批判的な声のほうが優勢だった。ちょうどこの時、ブラック・ライブズ・マター運動が盛り上がっていたが、ナイキの本拠地がアメリカであっただけに「(人種差別を行っている)お前らに言われたくない」といった声も目立っていた。 筆者の評価としては、動画のメッセージには共感はするが、広告・宣伝として効果的であったかは疑問が残るといったところだ。 なお、ナイキジャパンはこの動画を公開したことについて謝罪はしておらず、取り下げもしていない。
今回のダヴの広告に対しても筆者としては同様の評価である。ただし、ナイキと同様、広告を取り下げる必要も、謝罪をする必要もないと考えている。この広告は10月13日までの期間限定のものであるし、伝えようとしているメッセージ自体は不適切なものとは言いがたいからだ。 ■ダヴの広告は世界で称賛されてきたが… ダヴ社は、2004年から「リアルビューティー・キャンペーン」を世界で展開してきた。このキャンペーンでは、人工的な美しさではなく、自然であること、自分らしくあることが「真の美しさ」であることを訴え続けてきた。
外見の美しい女優やモデルではなく、一般人や化粧をしない素顔の人たちを広告に登場させるなど、有言実行の取り組みを続けており、全世界で支持を集め、世界の広告賞も多数受賞している。 今回物議をかもした広告も、上記の流れの中で位置づけてみると、自然な展開であるようには見える。文脈を知っている広告業界の人が見ると、この広告に問題があるとは思わないのではないかと思う。 ただし、日本の一般の消費者の人からしてみると、やはり違和感を抱いてしまうものだったのではないかと思う。
ダヴ社は、自社のXアカウントから「#カワイイに正解なんてない」を付けてリポストすることを呼びかけたが、これも批判意見を増幅させる結果となってしまったように思える。 ■日本で成功した啓発広告は? 日本でも、啓発型の広告で称賛を集めた事例がある。ダヴと同様に、渋谷界隈の屋外・交通広告を利用した事例を見てみたい。 総合刃物メーカーの貝印が2020年にSHIBUYA109のビッグボードと東京メトロ半蔵門線の電車内などに掲出した、剃毛・脱毛に関する啓発広告だ。