「『サイギャップ』なんて言葉はじめて知った…」ダヴのルッキズムに意義を唱えるキャンペーンは「逆効果」? 「啓発キャンペーン」が悪手となった根因
■どうすれば「炎上」を避けられるのか 他にも日本で称賛された事例として、P&Gのヘアケアブランドのパンテーンが行った「#HairWeGo」キャンペーンがある。 このキャンペーンは、髪をテーマに、1人ひとりの個性を尊重するきっかけづくりを行おうとする取り組みだ。ブラック校則の見直しを促したり、就活を自由な髪で行うことを呼びかけたりと、社会活動的な側面も持った取り組みとして、高い評価を得ている。 ダヴもパンテーンも、ともにしっかりと調査を行ったうえで、それに基づいて展開されている。ダヴのほうも、メッセージの方向性自体がズレているわけではない。違いは、表現面での細かな配慮に出ているように思う。
ダヴの広告は、「リアルビューティー・キャンペーン」の流れから、グローバルな発想で展開されたものだと思うが、欧米であれば、おそらく炎上はしなかったのではないだろうか。 ある考え方を否定したり、批判したり、疑問を呈したりする表現は刺激的ではあるが、日本では批判を受けやすい。 パンテーンの「#HairWeGo」は、規制の考え方に疑問を呈するものだが、キャッチコピーも、「この髪どうしてダメですか」「さあ、この髪でいこう。」「この髪が私です。」といったもので、否定形にはなっていない。
商品の利用者やターゲット層以外の人たちにも共感されるメッセージになっていたのか否か? というのがポイントであったように思う。 【画像】むしろ知らない言葉のほうが多い? 「ルッキズムを煽ってる」と批判殺到のダヴ広告
西山 守 : マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授