「『サイギャップ』なんて言葉はじめて知った…」ダヴのルッキズムに意義を唱えるキャンペーンは「逆効果」? 「啓発キャンペーン」が悪手となった根因
本広告は、「#剃るに自由を」をテーマにしたコミュニケーションの一環として展開されたもので、腋毛を見せたヴァーチャルモデルのビジュアルに「ムダかどうかは、自分で決める。」というキャッチコピーが添えられている。 この広告は、称賛の声が大半で、批判意見はほとんど見られなかった。特定の行動や意見を否定や批判するものではなく、先述した1、2のどちらの要素もなく、人々から受け入れられやすいメッセージだったからだ。
筆者としては、キャッチコピーに「剃るかどうか」ではなく、「ムダかどうか」という言葉を使った点も大きいように思う。これによって、より一般的、普遍的なメッセージになっているからだ。 もうひとつは、2023年にリクルートの結婚情報サービス「ゼクシィ」が創刊30周年を記念して、渋谷駅に掲出した大型看板である。 この看板は、同性カップルや事実婚カップルなどの、マイノリティの複数カップルの写真に、「あなたが幸せなら、それでいい。」というキャッチコピーを添えたものだ。
この広告は、見方によっては挑戦的かもしれないが、渋谷区は2015年に「同性パートナーシップ条例」を施行しているし、渋谷はリベラルな若者層も多いため、その場に馴染みやすい広告だったと言えるだろう。 リアルで広告に接してSNSに投稿していた人たちの大半は、この広告をポジティブにとらえていたように見える。 やはり、この広告も「あなたが幸せなら、それでいい。」というキャッチコピーによって、性的マイノリティの啓発だけでなく、一般的、普遍的なメッセージへと昇華されている。
ただし、この広告もメディアで報道された際には、保守派の人たちから批判的な意見も出た。性的多様性自体を否定する意見は少数派だったが、「マイノリティの人を広告にして、広くアピールする必要はあるのか?」という意見は少なからず見られた。 ナイキやダヴの事例と同じで、「意見自体は否定しないが、声高に言うことではない」といったところだろう。 全体としてはポジティブな意見が優勢だったので、成功だったと言っていいが、話題が広がれば広がるほど、意図しない反応も出て来てしまうのも事実だ。