大記録が生まれた感謝祭が明け、“3強”の明暗がくっきり?『モアナと伝説の海2』と『ウィキッド ふたりの魔女』の戦いが激化
前週の当記事で紹介したように、『モアナと伝説の海2』(日本公開中)と『ウィキッド ふたりの魔女』(2025年3月7日日本公開)、そして『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』(日本公開中)の3タイトルによって、記録的な興行成績を打ち立てた2024年の感謝祭週末。それが終わったとなると、気になるのは例年がたんと数字を落とす傾向にある“ポスト・サンクスギビング”の週末に、どこまで持ち堪えることができるかである。 【写真を見る】年越しの瞬間に停電し、たまごっちが若者たちを襲う!?A24の異色ホラーコメディが初登場 先週末(12月6日から8日)の北米興収ランキングに触れる前に、同週末の全体の興収成績をチェックしてみよう。感謝祭連休の終盤となった前週末3日間と比較するとほぼ半減の49.6%で、総興収1億3722万ドル。感謝祭→ポスト・サンクスギビングで半減以上の下落となるのは2019年(49.9%だった)以来ではあり、そういった意味ではコロナ禍前の通例が戻ってきたといえようか。何はともあれ、元の数字が大きかったわりには下落も少ない方であろう。 さて、そんな週末のランキングは、上位3タイトルに変動は見られず。『モアナ2』は前週対比36.7%と大きく数字を落としたが、それでも3日間の興収は5128万ドル。金曜日(12月6日)に前作の累計興収を上回り、週末終了時点で累計興収は2億9932万ドルとなって2024年公開作の第5位に浮上。月曜日の段階で累計興収3億ドルの大台にも突入。評価自体は決して高くないながらもゴールデン・グローブ賞アニメーション映画賞にノミネートされたとあれば、今後の賞レースに向けて“メガヒット”という箔はつけておきたいところだろう。 一方、大ヒット効果で賞レースの主役候補に名乗りを上げつつある『ウィキッド』も、週末時点で3億ドルを突破。勢いでは『モアナ2』に逆転されるのも時間の問題だろうと思われていたが、平日に入ってからデイリー興収で同作を上回ることに成功。そして『グラディエーターII』に関しては、この2作にすっかり置かれ気味。週末時点での累計興収は1億3200万ドルと、このままだと前作超えは厳しそうな状況。頼みの綱の賞レースも、デンゼル・ワシントンの助演男優賞以外は盛り上がりが低下してきているようだ。 さて、4位以下には新作タイトルがずらりと並んでおり、リバイバルで大盛況となって6位にランクインしたクリストファー・ノーラン監督の『インターステラー』(14)を含み、なんと4位から14位までの11作品中9作品が初登場作品という異例の状態に。ちなみにそのなかでなんとか粘っている2作品が、『レッド・ワン』(日本公開中)と『The Best Christmas Pageant Ever』という典型的クリスマスムービーというのは特徴的である。 ここで取り上げたいのは、9位にランクインしたA24作品『Y2K』。タイトルの通り“Y2K(=2000年問題)”を題材にしたホラーコメディで、高校生のイーライは1999年の大晦日に仲間たちとパーティーへ乱入。憧れのクラスメイトのローラと年越しの瞬間にキスをすることを夢見ていたのだが、彼女がボーイフレンドとキスをするところを目撃してしまう。その矢先に停電となり、突如としてビデオデッキや電子レンジ、たまごっちといった電子機器がパーティの参加者たちに襲いかかってくるというストーリーだ。 1500万ドルの製作費に対し、初週末の興収は200万ドル強。批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば批評家からの好意的評価の割合は45%、観客からの好意的評価は50%。興行面も批評面もどちらも伸び悩み気味ではあるが、「野心的」や「大胆」と評する声が目立っている。監督を務めたのは『ブリグズビー・ベア』(17)などで知られる喜劇俳優のカイル・ムーニー。出演には『白雪姫』(2025年3月20日日本公開)が控えるレイチェル・ゼグラー。本作のような懐かしさのある青春ホラー映画は、後になってカルト的人気を集めやすいだけに、まずは日本に上陸してくれることを願っておきたい。 文/久保田 和馬