新型トライトンに「パジェロの代役」としての素質はあるか?
「スーパーセレクト4WD-Ⅱ」におけるもうひとつの見どころは、「4Hモードにある」と三菱自。市街地の小さな四つ角などでハンドルをめいっぱい回して曲がろうとするとブレーキがかかったようになる、4WD車によくあるタイトコーナーブレーキング現象の発生を、トルク感応式センターデフによって防ぐのだ。 このトルク感応式センターデフは、パジェロで培った独自技術。「オフロード・オンロード問わず、いつでもどんな状況でも安心してドライブできる」とするメーカーの文言を裏付ける技術とみてよい。
オンロードでの快適性の高さも予想以上で、私には驚きだった。 セパレートシャシーに、後輪用はリーフ型スプリングによる固定式車軸(リジットアクスル)という、まさにクロカン4WDとして悪路走破性に特化したような設計なのに、乗員の姿勢はフラットに保たれていた。 ディーゼルエンジンも、やたらと低回転域でのトルク感を追求するのでなく、ドライバーが期待する常用回転域を重視した設定で、乗用車的。市街地から高速道路にいたるまで扱いやすいのに感心する。
ハンドルは操舵のあと、自然に中立付近に戻るキャスターアクションがしっかりある。クロカン4WDではあえてキャスターアクションを抑えているモデルもあるけれど、トライトンはここも乗用車的で、私にはたいへん扱いやすかった。 ■新たなSUVの選択肢になる可能性 国内仕様のトライトンは、ダブルクルーキャブといって後席も空間的余裕がたっぷりある4ドアのキャビンを持つ。静粛性も高くて、なるほどこれならファミリーユースにも適していそう(乗降はちょっと大変だが)。
荷台は、奥行き1525mm×幅1470mm(GSRの値)。荷台を覆うトノーカバーには手動式も電動式もあり、さらにキャノビーもオプションで用意されている。 「三菱自動車のコアモデル」とうたわれるトライトン。こういうクルマを「日常使いに」という三菱自の提案、北米ならぬ日本でどこまで受け入れられるだろうか。大きなボディサイズさえいとわない人ならば、きっと新しく楽しい日常が待っているに違いない。
小川 フミオ :モータージャーナリスト