『あのちゃんねる』小山テリハ氏、番組を守り続けて異例の地上波復活 あのちゃんとの“物語”で受ける刺激とリスペクト
■温かい人たちのおかげで流浪の番組に ――あのちゃんは、最初から冠番組に乗り気だったのですか? 実は企画書を出した時、あのちゃんはゆるめるモ!を脱退して、世の中から消えていたんです。ゆるめるモ!のマネージャーさんを経由して「あのちゃんの企画がテレ朝で通ったんですけど、やってくれますか?」とオファーしたんですけど、本人のモチベーションが分からないので、断られる可能性もあると思ってました。『出川とWHYガール』で密着した時も、カメラを向けると逃げて、まかれるし、密着すると約束してたライブに30分以上来なかったりしたので。 ――昭和の破天荒芸人みたいですね。横山やすしみたいなエピソード。 たしかにそうかもしれない(笑)。行動が予測できないし、コントロールできないし、『あのちゃんねる』をやると決まっても、「初回収録、来てくれるかな…」って前日まで思ってました。来なかったらそれはそれで内容変えるか、っていうゆるい感じでスタートしたんですけど、回数を重ねるうちに手応えを感じてくれたのか、ずっと頑張ってやってくれていると思います。 ――『バラバラ大作戦』で1年間放送されて終了すると、次はCSに舞台を移されました。 CSに優しい人がいて、「『あのちゃんねる』面白いね」って応援してくれて、場所を用意してくださって、2か月に1回とかのペースでやっていました。しかもニューヨークさんとかせいやさん(霜降り明星)とか豪華な人が出てくれる謎の感じで、「あのちゃんって面白いね」と、芸人さんたちの中で広がっていった時期だったかなと思います。 ――そしてCSからYouTubeに行きました。 そうこうしていくうちに、テレ朝のYouTube「動画、はじめてみました」っていうのが盛り上がってきて、「『動はじ』で『あのちゃんねる』をやらせてもらえませんか?」とお願いしたら、優しく受け入れていただけたんです。 ――社内のいろんなとこにファンがいたんですね。 そうなんです。温かい人が多くて、『動はじ』は船引(貴史)さんがあのちゃんを面白いと思ってくれて、やってみたらすごく跳ねて。そのチャンスをくれた先に「メタバースでゲーム作っていいよ」とか、いろいろやらせてくれました。そんな流浪の感じで、気づいたらもう4年ぐらい経って、また地上波に戻ってくることになったんです。 ――4年間、番組を守り続けられたのが、すごいですよね。 たしかに、ゆるゆるながらも1回も止まってはなくて、チャンスがあれば全部やらせてもらって、そこで結果を出せたことで、またいい場所を彼女に用意できることができて、すごく“物語”を感じます。 あのちゃんはもちろん最初から特異な存在で面白いんですけど、どんどん進化しているんです。私はずっとそばで一緒に番組を作りながらそのドキュメンタリーを見ているようでもあって、彼女の生き様を感じて自分ももっと頑張ろうって奮い立つし、彼女が発表する音楽や映画、今出ているドラマ『民王R』もそうですが、忙しい中でクリエイティブで毎回最高を更新していくタフさがあるので、すごくリスペクトしています。 ――ゲストを迎えてトークする企画「スナックあの」ってあるじゃないですか。あんな回し役ができるなんて、最初の頃は想像できなかった感じでしょうか。 そうです。あれができるようになったのも、まさに彼女の一つの成長ですよね。ああやって来てくれた人の話を引き出して会話できるようになったのを見ると、親戚のおばちゃんみたいな気持ちになったりもします(笑) 『ロンハー』のスポーツテストでは、加地さんにオタクの長文プレゼンみたいなメッセージを送って彼女が抜てきされたんですが、私、現場で感動しちゃって。あのちゃんが大人になって一生懸命走ったり、みんなと勝ったり負けたりして、気づけば主人公みたいになってたんです。彼女が学生時代にできなかった(※)遅れた青春を取り戻してる感じがあって、本当に良かったと思いました。 (※)…あのは学生時代、周囲となじめず保健室登校や引きこもり生活を送っていたことを明かしている。 ――地上波レギュラー復活一発目のゲストが、出川さんでした。 番組立ち上げのきっかけだった出川さんに「帰ってきたよ」という思いと、こんなに進化したあのちゃんとがっつり濃厚に1対1で絡むことはなかったと思うので「見ててね」という気持ちもありました。 ――そこにも“物語”がありますよね。個人的に『あのちゃんねる』では、ウエストランドの井口(浩之)さんの特殊な歯並びにあのちゃんがすごいテンション上がるのが大好きです。 ありがとうございます。『あのちゃんねる』は「歯周病ちゃん」というキャラクターもいるくらい「歯」が一つのテーマになっていて、この前も口内をイメージした中で演者さんがみんな歯の格好をして進む「歯すごろくで遊ぼう」って企画をやりました(笑)。あのちゃんはバイ菌になってプレイヤーをチクッて刺したり、マス目に歯に関する罰ゲームを入れて。そういうのを会議でずっと考えてるから、スタッフがみんな歯の脳になってきてます(笑) 最新話では、これも「意味が分からない」とか、「あのちゃんのスケジュールがなかったのか」と見た方には言われそうなのですが、<「スナックあの」に来たらあのちゃんが子どもになっている…けど中身はあのちゃん>という、ヘンテコな企画をやっています。常にTVerの再生回数とか数字のことを言われるので、プレッシャーでもありながら、『あのちゃんねる』が好きな人たちがより一層楽しんでもらえるように「何だこれ!?」っていうどこか引っかかったり、違和感がある企画をやっていきたいですね。