『あのちゃんねる』小山テリハ氏、番組を守り続けて異例の地上波復活 あのちゃんとの“物語”で受ける刺激とリスペクト
意義を感じた「冨樫先生からのお手紙」
注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて“テレビ屋”と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載インタビュー「テレビ屋の声」。今回の“テレビ屋”は、テレビ朝日のバラエティ番組『あのちゃんねる』(毎週月曜24:45~)、『サクラミーツ』(同木曜25:56~)などでプロデューサー・ディレクターを務める小山テリハ氏だ。 【写真】番組グッズのスウェットを自らサイズチェクする小山テリハ氏 2020年10月に深夜のバラエティゾーン『バラバラ大作戦』1期生としてスタートした『あのちゃんねる』は1年後からCS、YouTubeへと舞台を移し、今年10月に地上波で再スタート。この異例の復活の背景には、番組を守るために奔走した小山氏の強い思いがあった。そんな同氏に、あのとの出会いや感じる成長、さらには印象に残る仕事や番組作りのこだわりなどを聞いた――。
■「テレビで頑張ろう」と自信が持てた出川哲朗の存在 ――当連載に前回登場したイーストの小宮泰也さんが、小山さんについて、「どの局の人からも“小山さんってどんな人?”ってめちゃめちゃ聞かれるんですよ。若手の中では今、業界で一番有名じゃないですかね。ものすごく仕事熱心で、深夜3~4時に当たり前にLINEして仕事の話をするんです」とおっしゃっていました。 3~4時に当たり前に連絡してるってことは、小宮さんも一緒じゃないですか(笑)。それくらい、この世代になかなかいない向上心のあるストイックな人だと思います。小宮さんと初めて一緒に仕事をした時、私が所属する『アメトーーク!』とか『ロンドンハーツ』の加地(倫三)さんのチームのノウハウを吸収しようという気持ちをすごく感じたんです。「こんな企画とかどうですか?」って提案もよくしてくれて。年が近くて優秀な人だという印象があって、作家さんの評判も良かったので、小宮さんと一緒に番組をやりたいと思って特番でお仕事をして、後に『イワクラと吉住の番組』をやることになりました。チームの指揮を執って、リーダーとしての素質があって、本当に熱い人だなという印象です。 チームの人たちも、「小宮さんの言うことは聞く」みたいな感じで、それは加地さんのチームに近いものを感じました。私は最初『アメトーーク!』に入ったのですが、「加地さんがこうしたいっていうことをかなえたい」とチーム全員が動くんです。あの若さでそういうチームを持っていることは、相当すごいなと思います。 ――『イワクラ吉住』の時は、刺激を受けながら一緒に仕事をしていた感じですか? そうですね。リーダーシップがありながら、私の考えていることの根幹がブレないようにちゃんとアウトプットしてくれる歩み寄りもすごくある方なので、やりやすかったです。それと、再現VTRが撮れる強みとか、乃木坂46さんやSnow Manさんとの関係値もあって、それがうまく相乗効果として出てたかなと思います。 ――この業界に入った経緯は、以前フジテレビの木月洋介さんの企画でテレビ東京の大森時生さんと対談してもらった時にも伺いましたが、友達が隣で書いていたテレビ朝日のエントリーシートの質問に「自分を○○芸人に例えると何芸人ですか?」という『アメトーーク!』に則ったお題が面白くて、ノリで申し込んだんですよね。 そんな感じで入った会社にもう9年もいるんで、結構びっくりしています。就活が苦手で早く就活から逃げたい一心で「テレビ朝日が受かったからもう終わりでいいや」って感じだったので、こんなに飽きずにやれているなんて想像もしなかったので、本当にありがたいですね。 ――なぜここまで続けられたのでしょうか。 『アメトーーク!』が合ってたなと思います。毎週違うことをやるから飽きずに、どんどんいろんなことに詳しくなっていくんです。「BiSHドハマり芸人」で、ものすごく詳しいファンの方々とやり取りして、今も連絡を取ったりするし、毎回出会いがある。競馬について全然知らなかったけど「競馬大好き芸人」を担当して興味を持つこともありますし、逆に「HUNTER×HUNTER芸人」なんて、好きなものをプレゼンできる場が来たから頑張ろうと思えるんですよね。それに毎回違う芸人さんが出られるので、「この人も面白い」ってどんどん発見があって、気づいたら5年ぐらいあっという間に経っていました。 ――『アメトーーク!』からキャリアがスタートして、これまでの中で特に印象に残る仕事は何でしょうか? 私はベースとしてずっと自分に自信がないんですけど、ひょんなことからテレビ局に入ったので、この仕事が合ってるのか分からないままやっていたんです。そんな中、入社して初期の頃に、『出川とWHYガール』という番組で出川(哲朗)さんとご一緒させてもらったのですが、出川さんが収録をすごく面白がってくれて、その後もいろんな人に会うたびに私のことを「この子イカれてるんだよ!(笑)」って紹介してくれたんです。ずっとテレビの第一線でやって来た人が、自分と仕事をして面白いと言ってくれたことで、「テレビで頑張ろう」とちょっと自信を持てた最初の機会でした。出川さんとの出会いは結構大きくて、それが今番組をやらせてもらってるホリケンさん(ネプチューン・堀内健)との縁にもつながってる気がします。 それと、『サンパチスター』という霜降り明星さんと宮田俊哉さん(Kis-My-Ft2)MCの番組で、オリジナルの二次元キャラたちがジャルジャルさんや板倉(俊之)さんが書いた漫才やコントネタをやるっていう内容なんですけど、粗品さんが「サンパチスター」という番組タイトルの曲を作ってくれたんです。その最初の音源が上がってきた時に、「めっちゃいい曲だ!」ってデスクで一人感動して。同世代でこんな才能がある人と仕事ができるってすごく幸せだなと思えたんですよね。 ――あの番組は2020年ですから、粗品さんの音楽の才能が現在ほど注目される前ですよね。 あの番組はキャラクター一人ひとりの設定やビジュアルとか名前も、自分で全部考えていたので、自分のオタク要素から生まれた企画が粗品さんの才能と相まってアウトプットされたことが、本当にうれしかったです。 ――最近では『イワクラ吉住』で、『HUNTER×HUNTER』の冨樫義博先生に手紙を送って、大量の直筆のメッセージが返ってきた回が、大きな話題になりました。 あの特集回は、冨樫先生、そして『HUNTER×HUNTER』のファンとして、後世に1個功績を残せたかなって、ちょっと思ったぐらいでした。先生からの原稿が届いた時はスタッフみんなで震えてましたね。「話を受けてもらえたけど、本当に返ってくるかな?」「どんなのが来るかな…」「1行で意味深なものが来るのかな」とみんなであれこれ妄想していたんですけど、想像を超えるボリュームが届いて、本当に鳥肌でした。自分がこの業界に入って、一つ意義のあることができたかなと思えました。 それに、冨樫先生が『サクラミーツ』が作られたときの喜びをお手紙の中に書いてくれていて、自分の企画した番組を知ってくれているなんて…と本当に驚きましたし、めちゃくちゃうれしかったです。この仕事をやっていて良かったと、心底思いました。