「SNSのせいにするなんて情けない」…兵庫知事選・名古屋市長選「既成政党大敗」3つの根本原因とマスコミ・政治家の自己都合
河村の「市民税減税」「市長報酬減額」には勝てなかった
これに対し、大塚氏は「効果の検証」を踏まえて判断する考えを示してきた。選挙中はSNS上に「減税しても効果は限定的」「いや、かなり市民は助かっている」といった減税論争が目立つようになり、大塚氏は給食費ゼロや敬老パス負担金ゼロ、ガン検診自己負担ゼロなどの公約で「家計の財布10%アップ」を図ると訴えた。 大塚氏が代表代行を務めた国民民主党は、10月の衆院選で「手取りを増やす」と掲げ、公示前の議席を4倍増にした。比例代表の得票数は2021年衆院選の259万票から617万票に140%増となった。「103万円の壁」見直しやガソリン税を軽減する「トリガー条項」凍結解除、消費税減税といった政策は、物価高に苦しむ人々のハートをつかみ、衆院で与党過半数割れの状況に追い込んだ。連日のように玉木雄一郎代表らはメディアに取り上げられ、同党の政党支持率は急上昇している。 だが、「手取りを増やす」という点で言えば10年以上前から減税政策を採ってきた河村市政の継承の方が人々に響く。河村氏は2009年の市長選で「市民税減税」「市長報酬減額」などを掲げて自民党と公明党が支持した候補を破り、出直し市長選やリコール(議会解散請求)に伴う市議選などを経ながら政策を推進してきた。現職や路線継承をうたう候補が相手であれば、通常は「手取りを増やす」政策を新たに訴えれば効果的だ。しかし、その意味では今回は本来の「争点」にはならなかったと言える。
SNS上にムーブメントがみられた
実際、中日新聞社などが11月16、17日に実施した調査によれば、河村市長時代の市政を評価する人は75.7%に上った。評価しないは2割で、評価する人の多くは広沢氏を支持する傾向がみられた。この結果から見ても河村市政の「継承」を望む声は強く、約8割が「減税」の維持を求めている。選挙戦で「減税は市民全体への恩恵が少ない」と訴えたところで、有権者に強く響かなかったのは当然だろう。共産党が推薦した尾形慶子氏は財政圧迫などを理由に減税中止を訴えたが及ばなかった。 2つ目の理由は、「空中戦」の不発だ。7月の東京都知事選で予想外の次点となった石丸伸二氏や、総選挙で躍進した国民民主党、11月の兵庫県知事選で返り咲きを果たした斎藤元彦氏の選挙戦ではSNS上にムーブメントがみられた。記者会見や演説などのショート動画が拡散され、それが口コミでも広がって集票力に繋がっていったと言える。