子どものための''不動産屋''? 家と土地からアプローチする福祉の形 #豊かな未来を創る人
── ビジネスとしてきちんと成立するかどうかも、この事業を始めるにあたって重要な判断軸だったと。 シングルマザーにただ寄り添って「大変だったね、無理しなくていいよ」と安く家に住んでもらうのは本質的な自立支援にはならないと思います。人の喜びって、何かをしてもらうことよりも、何かをして人の役に立つことで感じられるものだと、私は思うんです。自立のためには、与えられる側ではなく、与える側になることが大切。そのために必要なのは福祉だけではなくビジネス的なマインドだと考えているので、「不動産×子ども」という構造の中にはビジネスの要素が必要不可欠でした。 ── それで現在は、ビジネスと福祉、両方の視点を持って取り組んでいると。シングルズキッズでは「不動産と福祉の共通言語をつくる」というバリューを掲げられていますが、まさに、不動産というビジネスと福祉とをつなぐような立ち位置を担っているのですね。 私は不動産業界から何も知らずに飛び込んできたので、シェアハウス運営ではトラブルが多く起こり、福祉の勉強をしないと乗り越えられないことがたくさんあったんですね。福祉のことを学んだり関係者と話したりして感じたのが、不動産業界と福祉業界で全然話が噛み合っていないということでした。 不動産屋は顧客である大家さんの利益を守るために、リスクのある不良入居者を断らなければなりません。となると、保証人のいない無職のシングルマザーは断る対象になってしまいます。 一方で、福祉の人からすると、どうしようもない事情で困っている人に家を貸せないのが理不尽に感じられるんですね。福祉側の人は不動産を扱う側の事情やリスクについては知らないので、どうしてもそこですれ違いが生じてしまうのです。 ただ、不動産屋は困っている人が役所窓口に行くところに同行したり、制度で補助をしたりなどのソフト面での支援ができないけれど、それは福祉が得意なんですよ。だから、不動産と福祉が手を取り合えば解消できることはたくさんあるのに、と思っていたんですね。それが今のバリューとなり、その2つをつなぐのがシングルズキッズの立ち位置だと思っています。