乗馬ができる天皇賞馬・マイネルキッツ「ステイヤー気質でいつもゆったりのんびり」【もうひとつの引退馬伝説】
年齢を経ても馬体はスマートでピカピカ
現役時に走ったレースは実に52戦。10歳まで現役を続け、天皇賞・春制覇を筆頭に、ステイヤーズSや日経賞も制し、長距離を主戦場に息の長い活躍を見せたマイネルキッツ。 【予想配信】ダート最高峰の競走「チャンピオンズC」をガチ予想!キャプテン渡辺の自腹で目指せ100万円! 現在は乗馬というセカンドキャリアを経て、北海道の浦河で功労馬として余生を送っている同馬の様子を、著名な競走馬の引退後を追った『もうひとつの引退馬伝説~関係者が語るあの馬たちのその後』(マイクロマガジン社)から一部抜粋してお届けする。 乗馬ができる天皇賞馬―― 10歳まで競走馬として現役を続けたマイネルキッツは引退後、神奈川県横浜市にある根岸競馬記念公苑で乗馬として活動。会いにきてくれた子どもたちやファンをその背に乗せて、多くの人々に愛されてきた。 そんなマイネルキッツがうらかわ優駿ビレッジAERU(以下:AERU)にやってくることになったのは「突然のことだった」と、同施設の太田篤志さんは振り返る。 「お世話になっていた日高育成牧場の方が転勤で都内の施設に勤めていらっしゃって、別の用事で連絡した際に、話の流れでマイネルキッツの次の行き先を探しているということを知りまして。それでうちで預かることになったんです」 当時のマイネルキッツは、現役引退からちょうど10年が経ち20歳になっていた。 これだけの高齢馬となると、長距離の輸送や、環境が変わることはなるべく避けるべきだが、太田さんはこの話を受けた時にマイネルキッツならではの経歴に注目した。 「マイネルキッツは現役引退後に種牡馬を経て乗馬になったわけではなく、引退してすぐに乗馬になった馬で、競技会にも出た経験がある。それだけいろんな経験をした馬だからこそ環境の変化には強いだろうし、20歳を越えてもバリバリ乗馬としてお客さんたちを乗せていたのなら、体力的にも申し分ないかなって思いました。これからどんどん老いてきてしまうことを考えると、元気な今のうちに迎え入れた方がいいかなと」 こうして2023年の6月、マイネルキッツは慣れ親しんだ横浜を離れ、AERUにやってきた。初めて現地入りした際、太田さんはマイネルキッツを見てこう感じたという。 「馬体を見た時に感じたのは『すごくスマートな馬だな』って。馬体はピカピカだし、本当にスタイルがいい。現役を引退してすぐにやってきたってくらいに馬体は仕上がっていて、とても乗馬をしていた馬とは思えなかったですよ」 高齢になってもその美しい栗毛の馬体は、現役時代と遜色がなかったというマイネルキッツ。 おっとりとした性格も現役時代のままで、環境が変わると大抵の馬は慣れるまでは鳴いたり、放牧地に放せば走り回ってじたばたしたりするというが、マイネルキッツは放牧地に行っても動ずることがなかった。それだけに太田さんをして、「AERUに来た馬で一番扱いやすい馬だった」と言わしめるほど。 基本的には優等生で、悪さをすることはほとんどなく、その高貴なイメージも相まって「王子様のよう」と太田さんは感じていたという。