元日本代表、廣山望が語る新生バルサへの期待
FCバルセロナは、クラブの公式サイトで、アルゼンチン出身のヘラルド・マルティーノ氏を新監督として招聘することを正式に発表した。 ティト・ビラノバ前監督が健康上の理由で電撃的に退任したのが7月19日。フース・ヒディンク氏やチームOBのルイス・エンリケ氏といった大物候補をおさえて、チームの大黒柱、アルゼンチン代表FWリオネル・メッシと同じロサリオ出身のマルティーノ氏は当初から有力候補に挙がっていた。 マルティーノ氏はヨーロッパのクラブにおける指導経験がない。それでも、ヨーロッパを代表するビッグクラブが、彼にこだわった理由はどこにあるのか。 新監督の条件として、バルセロナは(1)スペインのフットボールに精通していないこと(2)さらにバルセロナと関わり合いの無いこと――の2点を挙げていたように思える。バルセロナの戦術は今では世界中で熟知され、対戦相手に研究し尽くされていた。ゆえに、新しい風を注入したかったようだ。 日本代表をPK戦で下したW杯南アフリカ大会や、準優勝したコパ・アメリカでパラグアイ代表を率いたマルティーノ氏のベースは固い守備だった。スペインの有力スポーツ紙『As』のイバン・モレーロ記者は、スペイン代表が1対0でパラグアイ代表を下した南アフリカ大会の準々決勝をこう振り返る。 「パラグアイは引いて守りを固めていた印象が強いが、スペインと同じ戦術をとれば、ポゼッションでは明らかに劣勢を強いられる。引かざるを得なかった、と考えた方がいい。強豪国ではない以上、対戦相手によって戦術は変わってくる」 つまり、マルティーノ新監督の「引き出し」の中には別のスタイルもあるということだ。実際、彼は戦術家として高く評価されている。原点は現役時代にプレーしたニューウェルズ・オールドボーイズで、稀代の「戦術マニア」として知られるマルセロ・ビエルサ監督から受けた大いなる薫陶だ。 指導した代表チームやクラブで攻撃的なスタイルを貫いてきたビエルサ監督は、昨シーズンのヨーロッパリーグでアスレティック・ビルバオを準優勝にまで導いている。そうした縁も、マルティーノ新監督とバルセロナを引き寄せたのかもしれない。 日本オリンピック委員会(JOC)の海外指導者派遣制度に採用され、今年1月からバルセロナへ留学中の元日本代表MF廣山望氏は、マルティーノ氏がかつて指揮を執ったパラグアイの名門セロ・ポルテーニョでリーグ優勝を経験している。