写真提供/にしおかすみこ

「うちは、 母、80歳、認知症。 姉、47歳、ダウン症。 父、81歳、酔っ払い。 ついでに私は元SMの一発屋の女芸人。45歳。独身、行き遅れ。 【写真】サーモグラフィ？ダウン症の姉と認知症の母がこんな感じだった 全員ポンコツである」 こんな書き出しで連載が始まったのが、2021年9月20日のこと。2020年、コロナ禍で久々に実家に帰ると、ゴミ屋敷のようになった我が家と、変わり果てた母の姿があった。元看護師で家の大黒柱の母が、認知症となっていたのだ。 それから同居を決め、家族の姿を赤裸々に描いてきた連載「ポンコツ一家」、2023年1月には連載13回までに書きおろし5編を加えて書籍『ポンコツ一家』が刊行、共感と驚愕の声が集まった。そしてさらに「パワーアップ」した家族の様子がまとまった『ポンコツ一家2年目』が2024年9月20日に刊行となる。 その中に入っている一編が「送り付け詐欺」だ。警察庁webサイトが発表したデータによると、2023年の特殊詐欺認知件数は1万9038件、被害総額452億6000万円で、過去最多。高齢者を対象に狙うオレオレ詐欺の数は減少しているが、詐欺の種類が豊富になり、あの手この手で騙す手口があることがわかる。「騙されない」ことへの意識が必要だ。警戒心の強いにしおかさんの母は、送り付け詐欺にひっかかりそうになる前から、警戒心を持っていた。 とはいえ、家族のことは信じてほしいもの。にしおかさんの母親がしたことは……。

2023年8月上旬

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2023年8月上旬、22時頃。 仕事から帰宅し、台所で家族が食べ終えた今日1日分のタッパー類を洗っていると、居間から母が顔を出してきた。大概、「いい加減もういいかな。ママ先に寝るよ」と私に声をかけてから2階に上がる。誰がつきあってくれと言った？とも思うし、待っていてくれたのか、とも思う。 背中でそのいつものセリフ待ちをしていたら、私の後ろでピタリと止まり、 「騙されるもんか」。 え？ 何だって？ 振り返るより先に母が「ウチの周り昼間はセミが鳴いてるのに、夜は、ほら、あんたにも聞こえるだろう？ 鈴虫が鳴くんだよ！ 夜だって外はクソ暑いだろうが！ 秋のわけがない！ 今は夏！ 騙されないよ！」。 ……風情の話？……黙っていると、 「そうさ！ 気温も虫もみんな地球がおかしくなってる！」。プリプリしながら寝床へと去って行く。