香取慎吾は役を通してアイドルとしての顔を分解する? 憂いと笑いを自在に操るコメディ演技の凄み
香取慎吾は役を演じることでアイドルの顔を分解している?
思い返してみればバラエティなどで香取は怪訝な表情や困惑した様子を素の表情として見せてはいるものの、それもすべては笑いを誘うためのものだったりする。シリアスな演技で影の部分を出すほどに、“香取慎吾”というアイドルが私たちを照らしてきた光の大きさを痛感するのだ。 一般的に「演じる」といえば、通常は俳優自身の顔の上に役の顔が仮面のように乗っていくイメージだが、香取の場合はむしろ役を演じることによって、アイドルの顔を外していくようにさえ見える。構築していくようで、実は分解されていく。そんな不思議な感覚があるのは、長年「慎吾ちゃん」として見せてきた安定した面があればこそ。演技という場面で、そのギャップをより効果的に出すことができる。 たとえ眉をひそめたくなるような人物を演じたとしても、バラエティ内のドラマとして成立させられるのは、香取のコメディ演技には憂いと笑いを自在に変化させる化学反応があるから。そう、まるで酸化と還元でコロコロと色が変わるインディーのように。 今後も、香取にはそんな化学反応をもたらす光と影のコメディ演技で私たちを大いに楽しませてほしい。そして同時に、この類を見ない「ケミカルシアター」という魅力的なコンテンツを、より多くの人に知ってもらいたいと願うばかりだ。
佐藤結衣