<【推しの子】>「普通とは逆を行く」アニメのこだわり “盛り”で原作の感動を伝える 平牧大輔監督インタビュー
「マンガをアニメ化する際、普通は誰でも描けるように線が多いところは省略する場合が多いのですが、キャラクターデザインの平山寛菜さんの『省略したくない』という意見もあり、原作の影や実線をちゃんと拾うようにしています。省略する部分もあるのですが、できるだけ原作のニュアンスを拾う。線の多さに関しては、僕がこれまで手がけた作品の中では最も多いのですが、大変だけどやる、という。だから、『【推しの子】』では、普通と逆のことをやっているんです」
「普通と逆」ということでは、ほかのアニメと比べて色数が多いのも「【推しの子】」の特徴だという。
「普通であれば、多色は『ここぞ』という時にしか使わないのですが、『【推しの子】』では『ここぞ』というところを増やしている。また、ただ場面で色を変えるのではなくて、キャラクターの照り返しの色にこだわっています。実写作品などで、照り返しの影の部分に別の色のライトを入れて印象的なシーンにするという手法があります。アニメでも『シティーハンター』の頃からやっているのですが、それを『【推しの子】』ではどうしようか?と考えながら作っています」
線数、色数を増やすなど、“盛る”表現を意識しているという。
「普通に作ったら、キャラクターの感情などマンガを読んだ時の印象を超えられないと思いました。もちろん、色や音がついてキャラクターが動くというのは、マンガにはないアニメの良さだと思うのですが、マンガは一コマ入魂で、見開きや大コマの演出ができる。アニメではできないところをどう置き換えるか。一番大切なのは、マンガを読んだ時の感情を、アニメでも同じように伝えることです。それが“アニメに置き換える”ということだと考えているので、そのためにいろいろなことをしています。もちろん、盛りすぎるとよくないので、どこを盛って、どこを盛らないかは、しっかりと打ち合わせをしています」
◇読後の感情を表現する“色” 助監督のセンス