「80を過ぎて、なんでこんな苦労を…」 広島市西区の市道陥没事故、発生から1カ月、住民の不安尽きず
広島市西区福島町での市道陥没事故は、26日で発生1カ月となった。現在も60人を超える住民が避難生活を続けており、市は被害のあった建物の所有者たちと補償に向けた協議を進めている。 【画像】陥没した広島市西区の市道交差点 事故は9月26日に発生し、市道が東西約40メートル、南北約30メートルにわたり、深さ最大約2メートル陥没した。市は現場の埋め戻しを28日に終えた後も、一帯の立ち入りを規制し、電線や通信ケーブルの移設などを続けている。 現場の半径50メートル以内の建物の危険度調査では、市営住宅2棟を含む9棟を「危険」、3棟を「要注意」と判定した。13棟は帰宅可能とし、1棟は改修を予定する。今月25日時点でホテルや民間の賃貸住宅などに34世帯64人が身を寄せている。 市は被害建物の所有者たちと補修や転居、解体、建て替えなどの補償を個別に協議中。市営住宅2棟の住民とは、別の市営住宅へ住み替える調整を進めている。 「ずっとそわそわして落ち着かない感じ」。傾きなどが生じた市営住宅に住んでいた会社員女性(39)は事故後、中区でのホテル暮らしが続く。小学生の息子2人を朝、車で学校に送った後に出勤する日々。手料理中心だった食事は外食ばかりとなった。 今後の住まいはまだ決まっていない。息子に転校はさせたくない。同じ学区内を希望し、市などと転居に向けた相談を重ねる。 市は市営住宅について解体か修繕かの方針を示していない。住人の80代女性は月内に東区の賃貸住宅に引っ越すという。転々としたホテルからかかりつけの病院に通い、慣れない道でバス停を探し、涙があふれた。「80を過ぎて、なんでこんな苦労をしないといけんのんじゃろ」。福島町では約50年暮らした。新生活への不安とともに慣れ親しんだ地を離れる悲しさがこみ上げる。 市は地下約30メートルでの雨水管工事と事故との因果関係を認めている。通常起きない大型掘削機内へ下部から泥水が流れ込む様子が事故発生時にカメラに映っており、機械に何らかのトラブルが生じた可能性がある。11月にトンネル工学や地盤工学など第三者の専門家を入れた検証委員会の初会合を開き、原因究明を本格化させる。
中国新聞社