<8億円問題>渡辺喜美氏は何法に抵触する可能性がある? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
■賄賂罪
賄賂罪は収賄(もらった)と贈賄(あげた)のカネの流れを特定し、収賄側にもらった見返りを果たすだけの能力(職務権限)があれば受け取った側に単純収賄が成立します。贈賄側から「請託」(内々の依頼)があればより重い受託収賄罪が適用可能。猪瀬氏の場合は徳洲会グループは医療業で、都内の病院や介護老人保健施設の認可権は都が握っていましたから職務権限はありました。後は賄賂だったという確証か、請託したと徳洲会側が言えば成立したでしょう。そうならなかったのは当局も賄賂とまで認定できず、請託に関しても言わなかったか、そもそもなかったかでしょう。 渡辺氏は職務権限がほぼないに等しい。野党議員であっても国会でDHCなど化粧品業界へ有利に働くような質問をしていればわかりませんが今のところ見当たりません。なお受託収賄罪の最高刑は懲役7年。
■詐欺罪
「DHC」の吉田会長が4月10日付『週刊新潮』で条件付きで「詐欺罪での刑事告訴も持さない」と話しています。吉田氏は渡辺氏から送られてきたメールの内容を公表した上で「選挙資金」と当然認識するはずなのに「実際はあくまで個人的なことに使われていた」としたら「私を騙」したに他ならないと主張します。捜査機関が吉田会長のメールを押収して確かに選挙資金の要請に読めると判断し、かつ渡辺氏の「選挙資金ではない」が正しかったら詐欺を構成する以下の「3つの要素」、 1)だます意思がある(欺もう) 2)相手がだまされる(錯誤) 3)その結果としてカネをだました者に支払う を満たしかねません。詐欺罪の最高刑は懲役10年。
■結局のところ
8億円ものお金(返済分も含む)は国民の一般的感情が「個人的に借りられる」レベルをはるかに越えていると判断するでしょうから、捜査機関がまるごとその言い分を飲むとは思えません。逆に「なるほどごもっとも」となれば吉田会長の言う詐欺罪がマジで成立しかねません。おそらく選挙資金だったのでしょう。それを認めると失職や被選挙権の停止があり得、政治家を家業とする2世には耐え難いのかもしれないというのはわかります。でもウダウダしていると結局は猪瀬氏の二の舞になりそうです。 --------------------------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】