<8億円問題>渡辺喜美氏は何法に抵触する可能性がある? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
■公職選挙法違反
結局、猪瀬氏はこれを認めたとのは上記の通り。渡辺氏の疑惑も吉田氏が「選挙資金」のつもりで計8億円貸したというのだから選挙運動費用収支報告書の不記入にあたる恐れがあります。最も厳しいのが3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金。禁固以上の罪が確定したら当選が無効になります。またそれ未満でも猪瀬氏のケースでわかるように被選挙権(同一の選挙区)が5年間停止されます。このあたり職業政治家にとって致命傷でしょう。 もっとも選挙に強い渡辺氏が自身の当選のために選挙資金として使ったとは考えにくい。おそらく党所属の他の候補や比例区および供託金などに使ったのでしょう(「使ったとすれば」の話です)。だとしたら誰の選挙で誰が収支報告書を記載しなかったのかを特定しなければなりません。ゆえに公選法違反での立件は難しいという見方もあります。確かにそうなのですが特捜部など捜査機関が本気になれば、それこそみんなの党所属議員を片端から洗い出し始めるでしょう。党内はメチャクチャです。
■政治資金規正法違反
「個人で借りた」で通用しないと悟ったのか渡辺氏は4月、「個人の政治活動・議員活動に使った」という文書を党役員会に提出しました。 政治資金規正法は個人献金の上限を定めています。1人の政治家が1つだけ作れる「資金管理団体」は150万円。渡辺支部長の「政党支部」ならば2000万円。「政治資金パーティー」で150万円。吉田氏の献金も上限まで記録されていて、それを引いたとしてなお億単位の金額の記載が見当たりません。政治資金規正法はそもそも政治家個人への献金を禁じているのだから、そうだとしたらズバッと違反。上限以上のカネを受け取っていたら政治資金収支報告書への虚偽記入の疑いが出てきます。もっとも本来の意味での虚偽記入とは異なるので法律論としての疑問はあるのですが。虚偽記入となれば最も厳しくて5年以下の禁錮又は50万円以下の罰金。失職と被選挙権停止は公選法と同じです。 では渡辺氏が言い出した「個人の政治活動」に使うためのお金だったというのは通るのでしょうか。ほぼ法律の抜け穴をくぐるに等しいでしょう。なるほど規正法の主語たる「政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動」ではないから報告書の提出義務はありません。しかしいったんそれを認めたら何でもありに陥ってしまいます。