「あなたから買おうと思う」…素人営業マンでも「大型契約」!?テクニック以上に大切な「不変の」極意とは
「あなたから買おうと思う」
カウンターのカタログに目をやります。「代わりに配達って誰だろう」とカタログにクリップ留めされている名刺を見ると山口さんです。彼は私より一年早く入社した年下の先輩ですが、セールストークも流暢で販売成績もまずまずです。一方こちらは歳こそ上ですが、販売成績のほうはまだまだです。こんな時、慣れている営業担当ならすぐに機転を利かせて売り込むところですが、新人営業マンの私は黙って相手の話を聞くばかりです。 話を続ける奥さんの言葉にうなずいていると「あなたから自販機を買おうと思うの。いいかしら」と。なな、なんと、思いもよらない展開にびっくりです。奥さんが続けます。 「確かにウチの自販機は置いてから随分と経っているから、そろそろ替え時とは思うけど、あまり立て板に水みたいに良いことを聞かされても、じゃあそうしましょうという気にはならないのよ。それよりも、来てくれるたびに自販機をきれいにしてくれる人から買いたいじゃない」 願ってもない展開で嬉しいのですが、営業らしい売り込みは何もしていないので、驚きのほうが勝ります。
営業成功の糸口は売り文句のみならず
営業では自分たちが提供するものが、相手にとって「価値がある」と認められてから契約にこぎつけ、対価を受け取ることができます。そうもっていくためには、その価値を理解してもらうコミュニケーション力が大切だと言われます。確かにその通りですが、実際の営業現場でそのことを相手にわかってもらうのは、セールストークだけではありません。相手のためのちょっとした行動でも自分たちが提供できるものの価値を相手に伝えることができます。 正直なところ、私はそんなことを意識していた訳ではありません。汚れた販売機がちょっと気になって磨いていただけで、たまたま一本でも多く売れればという相手の求める方向に行動が向いていただけなのです。 「行動は言葉よりも雄弁だ」ということわざがありますが、まさに営業現場で言えることではないかとこの経験が教えてくれました。 『取引先が営業に本当に求めているものとは…「安くていい条件」よりもっと大事な「仕事の」真理』へ続く
山岡 彰彦(株式会社アクセルレイト21 代表取締役社長)