「推し」の健康、考えていますか? 振付演出家の竹中夏海が語るアイドルの労働問題
声がけは「自分の遺伝子史上最高を目指そう」
―アイドルはじめ芸能人の方はルックスが重視される世界ですよね。そのなかでもK-POPの細くて可愛いアイドルがいま、大人気です。ボディポジティブといったようなムーブメントもある一方で、ルッキズム的な価値観もやっぱり根強いと感じます。そうすると、アイドルの人たちのなかには極度のダイエットや摂食障害などで苦しんでいる人もいるのかな、と考えたとき、どういう言葉をかけるのかって、すごく難しいのではないかと思っていて。 竹中:そうですね。声がけについては臨床心理士の方にもお聞きしたんですけど、何によってストレスを感じるかって人によって違うから……例えば、マネージャーさんがほかのメンバーに痩せなさいって言ってるのを、別のメンバーが聞いただけで、その子がストレスを感じて摂食障害になってしまうこともある。言われた本人は大丈夫な場合もあるので、すごく難しいなとは思いつつ。 私のアイドル専用ジム「iウェルネス」のなかでは「痩せようね」っていう言い方ではなくて「自分の遺伝子史上最高を目指そうね」って声がけにしています。本当に、遺伝子には敵わないっていうことは覚えておいてもらいたいなと思うので。 ―なるほど。それは、人によって、減量しやすい体質の人もいれば、そうではない体質の人もいるということですよね。 竹中:そうです。すんごく痩せても生理が止まらない人もいれば、平均体重よりちょっと重めでも生理がすぐに止まってしまう人もいる。不思議なことに、身長や顔立ちには努力の限界があるということはみんな認識しているのに、なぜか体重や体型だけは努力次第って刷り込まれているじゃないですか。 たしかに私も臨床心理士さんとお話するまで気づかなかったのですが、そんなわけないんですよね。だから努力次第ではない――そもそも遺伝子史上ベストを目指さなくたっていいのだけれど、モチベーションを上げたいのであれば、自分の「自分の遺伝子史上最高を目指そう」という言い方をするようにしています。 ―人と比べてしんどくなっちゃうことって多いけれど、自分のなかのベストを目指す気持ちさえも否定したくはない、というところも共感します。アイドル以外の仕事でも、お守りになりそうな言葉ですね。