大相撲初場所、大混戦が予想される後半戦へ。中日まで1敗は琴ノ若、朝乃山、阿武咲、大の里。負けられない2敗の照ノ富士と綱とりを狙う霧島
2024年1月14日、大相撲初場所が東京・両国国技館で始まりました。横綱・照ノ富士も本場所での久々の土俵入り、幕内の全力士42人が揃った今場所は果たしてどうなるか?残念なことに、注目の朝乃山と北勝富士の休場が発表されました。『婦人公論』愛読者で相撲をこよなく愛する「しろぼしマーサ」が今場所もテレビ観戦記を綴ります。 * * * * * * * ◆この8日間いろいろなことが起こり過ぎた 大相撲初場所は中日8日目に、ひとり全勝だった元大関の前頭7枚目・朝乃山が、前頭10枚目・玉鷲の39歳とは思えない馬力の押しに廻しが取れず、すくい投げに破れた。もともと人気の朝乃山は、能登半島地震の被災地である富山県出身であるための応援も加わり、連日満員の国技館の声援はすごくなっているが、9日目は怪我で休場した。 1敗は朝乃山と大関を目指す関脇・琴ノ若、前頭14枚目・阿武咲、出世が早くて髷が結えない新入幕の前頭15枚目・大の里の4人となった。 8日目の大の里は、同じ石川県生まれで10歳年上のあこがれの前頭13枚目・遠藤を、馬力で一気に押し出した。遠藤は今場所、相撲のうまさを活かすだけの力強さがなく、1勝しかしていない。遠藤も能登半島地震の被災地に元気を届けたいのに辛いだろう。 3場所ぶりに登場した横綱・照ノ富士、先場所優勝して綱とりを狙う大関・霧島、大関・豊昇龍は2敗だ。3力士ともに、もうこれ以上は負けられない。後半戦は大混戦になるだろう。 何が起こるか分からないのが大相撲だが、この8日間、いろいろなことが起こり過ぎた。
◆北島忠治氏の「前へ」という言葉 中日まで見て、大相撲で大切な「心・技・体」を感じるのではなく、明治大学ラグビー部の監督を67年間務めた北島忠治氏(1901年~1996年)が言い続けた「前へ」という言葉を思い出した。 ちょうど中日に、NHKテレビの大相撲の中で「師の教え」というのが放送され、100年を迎える春日野部屋が守り続けている「辛抱して押す」が、現在の春日野親方(元関脇・栃乃和歌)のインタビューによって紹介された。押し相撲はもちろんだが、四つ相撲でも押さなければ、投げられないのである。 「前進する」と「押す」の反対の「引き」で、8日目に霧島は2敗となった。勝ちたい精神が全身にみなぎっている前頭4枚目・翔猿に押し出された。NHKテレビの正面解説の舞の海さんは、引いてしまった霧島について、「負け方は最悪ですね」と話していた。 8日目は、昨年の名古屋場所で優勝決定戦をした豊昇龍と前頭3枚目・北勝富士が対戦した。この相撲も引きの悲劇が待っていた。北勝富士は引いてしまい、その時、前から悪かった右膝を痛めたようで、土俵下から立ち上がれなかった。人の手を借りて車椅子に乗って帰った。北勝富士は4勝4敗だ。 前進の凄さを見せてくれたのが、前頭3枚目・豪ノ山と元大関の前頭4枚目・正代だ。 5日目、豪ノ山は立ち合いから一気に押して進み、豊昇龍はその身体能力を披露することなく寄り切られた。「ゴー、ゴー、豪ノ山」という感じだったが、2勝6敗だ。 7日目、照ノ富士と対戦した正代は、もろ差しで一気に進み、照ノ富士を寄り倒した。「これぞ圧力の正代」という相撲で、観客たちが土俵に向かって座布団を投げた。私は照ノ富士と正代のファンなので複雑な気持ちではあった。 ところが8日目の正代は、前頭2枚目・阿炎にのど輪をくらい、一気に押し出された。阿炎は2勝6敗、正代は4勝4敗だ。正代の母校は東京農業大学で、両手に大根を持って踊る「大根踊り」が有名だ。インターネットを見ながら真似したことがあるが、とても体力がいるので無理だった。後半戦は連日大根の味噌汁を作り、静かに勝ち越しを祈ることにした。