「おカネが振り込まれない…」送金障害などのトラブルがドミノ倒しのように波及する「システミック・リスク」とは
キャッシュレスを支える資金決済法
決済手段の中心は何と言っても「現金」です。しかし最近では、IT技術の進歩に伴い、また政策として推進されたこともあり、キャッシュレス決済が著しく普及しています。「キャッシュレス」(Cashless)とは、その名の通り現金を使用しない支払い手段のことで、クレジットカード、デビットカード、電子マネーなど多岐にわたります。 キャッシュレス決済は、モノとおカネの交換(受け渡し)のタイミングによって、以下の3つに分類することができます。なお、この分類は2015年に制定された「資金決済法」(2022年に改正)によって整備されました*1。 (1)前払式支払手段(プリペイド:Pre-Paid) モノの受け渡しよりも「前」におカネの支払いが行われる支払手段のことを指します。具体的な支払手段としては、「電子マネー」(Electronic Money)がこれにあたります。先におカネをチャージ(入金)しておいて、必要に応じてそこから支払いが行われます。身近なものとしては、交通系のPASMO(パスモ)やSuica(スイカ)などが挙げられます。 (2)即時式支払手段(リアルタイムペイ:Real Time-Pay) モノの受け渡しと「同時」(即時)におカネの支払いが行われる支払手段のことを指します。具体的な支払手段としては、「デビットカード」(Debit Card)がこれにあたります。使用したタイミングで即座に預金口座からおカネを引き落とすことで支払いが完了します。金融機関にもよりますが、独自にデビットカードを発行することもあり、預金口座のキャッシュカードをそのままデビットカードとして使うことも可能です。(3)後払式支払手段(ポストペイ:Post-Pay) モノの受け渡しの「後」におカネの支払いが行われる支払手段を指します。具体的な支払手段としては、「クレジットカード」(Credit Card)がこれにあたります。使用した分だけ、期日にまとめて預金口座からおカネを引き落すことで支払いが完了します。各申込者の信用に応じて、使用枠が設定されています。 このような決済のデジタル化は、金融機関のコスト削減のみならず、不透明だったおカネの動きを把握することにもつながります。また、おカネの流通速度を速めることにもなるため、経済成長を促す要素としても期待されています。 なお、日本政府は、2025年までにキャッシュレス決済率を「4割程度」にするという目標を掲げており*2、2022年時点では、クレジットカードが約30%、コード決済が約3%、電子マネーが約2%、デビットカードが1%となっています。 キャッシュレスは決済手段のひとつとして普及しつつありますが、日本全体で見ればまだまだ現金決済が主流であり、他の先進諸国と比較しても遅れをとっているというのが現状です。 *1 筆者は「資金決済法」制定準備の委員会に招聘されました。 *2 経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」(2018年4月策定)参照。