「おカネが振り込まれない…」送金障害などのトラブルがドミノ倒しのように波及する「システミック・リスク」とは
加速する「貯蓄から投資」、迎えた「金融政策転換」、景気回復の実態を伴わない「冷たいバブル」…ここ最近、経済に関するニュースが大きな話題を呼んでいます。この身近でありながらも複雑な経済問題について、私たちはどのように向き合えば良いのでしょうか。 今回の記事では、日本経済を支える「決済システム」について解説しています。決済はドミノ倒しのように連鎖するリスクを伴っています。入金を予定していたおカネが振り込まれなければ、そのおカネを当てにしていた支払いまでもが滞ってしまいます。社会の基盤を支えるインフラは様々ですが、このような決済システムもまた、生活に欠かせない重要なインフラ(決済インフラ)であると言えるでしょう。 *本記事は帝京大学経済学部教授の宿輪純一氏の著書『はじめまして、経済学 おカネの物差しを持った哲学』(ウェッジ)の一部を抜粋したものです。 【図解】決済の仕組み
「決済」の基本となる交換行為
通常、販売(Sale)という行為には、交換する対価が求められます。一般的には、おカネを対価として受け渡すことで取引が成立します。 たとえば、コンビニでパンを購入するとき、顧客は店員におカネを渡す(支払う)ことでパンを受け取り、店員はパンを渡すことでおカネを受け取ります。このように、特定の商品と、その対価であるおカネを交換して取引を完了させることを「決済」(Settlement)といいます。 決済の基本は「交換」にあります。かつては物々交換の時代もありましたが、おカネが誕生して「貨幣経済」となって以降、基本的には商品とおカネの交換(受け渡し)をもって決済が完了すると考えられています。このように決済とは、商取引の最終段階(“済”を“決”める)を意味しているのです。 なお、贈与(Gift)という行為もありますが、これは「対価のない販売行為」を指しています。厳密に言うと、贈与の場合は、「愛情」や「期待」などの精神的なモノが対価の役割を果たしているとも考えられます。