新元号「令和」 典拠となった『万葉集』は反文明の歌集だった
外来文化の和化
「やまとごころ」を大切にするのは悪いことではない。明治以来、「からごころ」に代わってこの列島に染み込んだ「ようごころ」(何事も西洋を基準とする考え方)というものがある。 しかし間違えてはいけない。「天皇」という制度は、中国(明治以後は西洋)に依拠する文明性(公)と、純日本的な文化性(私)を併せ持つ存在であり、日本文化は常に「から(よう)ごころ」と「やまとごころ」を併立させてきたのだ。建築史における「和様」(和風)とは古い時代に中国から来た様式が和化したものを指し、新しく中国から来た様式を「唐様」(中国風)としたのである。 外来の文化を素直に受け入れ、和化する(日本的に和(なご)ませる)ことこそ日本文化の真髄なのだ。闇雲な排外主義は本来ではない。幕末の志士たちも、明治の元勲たちも、そのことを理解していたからこそ、尊王攘夷から文明開化への転換が可能だったのではないか。 ちなみに、帝国海軍の「海ゆかば」の歌も万葉から取っている。家持の歌だ。艦が沈むときに歌ったという。その意味では「昭和」の方が万葉的であったかもしれない。「令和」の船は沈んでもらいたくないものだ。 *1:THE PAGE『安倍政権の「やまとごころ」 森友加計問題に見る日本政治の文化的矛盾』(2017年6月9日配信) *2:『「家」と「やど」―建築からの文化論』若山滋・朝日新聞社 *3:THE PAGE『AIは「脳の外在化」を進める人間の必然』(2019年2月23日配信)