<独占インタビュー・上>楽天・オコエ。「戸惑いは一度もない」
――これがプロ! の代表たる日ハムの大谷翔平、広島の黒田博樹ら、超一流のエースと対戦してきた。2人共にノーヒットに抑えられたが、感動と共に得るものが多かったのでは? 「自分のなかでは、1年目だから(打てなくとも)とは多少は思いますが、試合に出ている以上、1年目もベテランも関係ないんです。戦力として入っているんです。今度こそ打ちたい。もう一度対戦したいという気持ちが強いです」 ――黒田とは来年まで無理だから当面のリベンジは大谷だね。5月29日の初対決では、161キロのストレートの前に三塁ゴロ。試合後の「(161キロは)速くなかった」のコメントが波紋呼んだね(笑)。 「あれね。後で聞くと161キロではなかったらしいんです。実際は、151キロだったんです。だから打席で160キロの球じゃないとわかっていたんです。でも、それを口にするとビッグマウスだと言われます(笑)」 ――そこを気にしているらしいね。でも、ビッグマウスでいいじゃない。言葉で自己表現のできないアスリートは一流にならない。 「そうですかね? 書くのは記者さんですから、うまく自分の考えを伝えなきゃとは思います」 分析力の高い楽天のデータ部隊がチェックした数値は161キロでなくオコエの体感通りの151キロだったという。バッティングのポイントのひとつに「見極め」をテーマにしていると語っていたが、オコエの対応能力の高さを示すエピソードである。 ――打席での仕草を見ていると、1球、1球、バッティンググローブを締め直したり、いろんな動きをしている。あれは、イチロー、五郎丸ばりのルーティン? 「いえ違います。高校野球に比べると、プロは、1球、1球の投球間隔が長いですよね。そこでこっちが焦っていると、打席に中で、右のお尻に体重を乗せてとかの、考えが出てこないんです。だから、わざと足で長めにボックス内をならしたり、バッティンググローブを締めなおしたり、スイングをやったり、何かしらやりながら、自分で間を作っているんです」 ――投手との勝負はペースの奪い合いだと言われているからね。その間を与えまいとテンポを変えるピッチャーも少なくない。特に横浜DeNAの久保康友には驚いたでしょう? 「凄かったです。でも、久保さんとの2軍での対戦経験が生きて、ノーステップ打法を取り入れることもできました」 ――ノーステップ打法で、変則でクイックも入れてくる阪神の青柳晃洋を攻略したね。でも、あれ以来、ノーステップ打法はやっていない? 「僕の場合、ツーストライクに追い込まれて使う打法じゃないんです。クイックでタイミングの取れないピッチャーにだけ使います。青柳さんはクイックで変則なので、キレがあるように見えて、普通のタイミングでは差し込まれていました」 ――2ストライクに追い込まれてからノーステップを使うのも、ひとつの手では? 「ちっちゃく(小さく)なりたくありません」 このやりとりにオコエが追い求める理想像が見え隠れしていた。 彼と話をしていると、野球選手の枠を超えたアスリートのスケールを感じる。太陽のように明るく、聞き手に本当に素直に心をさらけだす。オコエが愛される理由がよくわかった。次回の<独占インタビュー・下>では、彼の野球哲学、将来ビジョンに迫る。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社) ※オコエ独占インタビュー・下は、近日中にアップします。