松尾潔・東京都知事選は「‟ひとり街宣“の分水嶺となるかも」と期待
投票率が変わると投票結果もかなり変わるというのは、政治科学的にも証明されていることで実例もあります。組織票とは、雨が降ろうが風が吹こうが、忠実な投票行動をするので、その票の数は大体変わらないと言われています。 一方で東京は特に無党派の人が多く「生まれ育って終の棲家までずっと東京」という方ばかりではないので、そういった人たちをどう取り込むかという一つの方策がこの「ひとり街宣」です。 ■「ひとり街宣」は究極の個と個の向き合い 2022年の杉並区長選で、長らくヨーロッパで暮らして、現地の市民運動などに従事していた岸本聡子さんが、たった2か月の選挙戦で当選したことが当時話題になりました。その時に原動力になったのが「ひとり街宣」だと言われています。 当時の岸本候補に心打たれた、芹沢悦子さんが「ひとり街宣」を始めました。投票を呼びかける行動を駅前や商店街の入口でダンボールの切れ端にちょっと手書きのポスターを描いて始めたもので、だれか特定の候補者にというわけではなく「選挙自体に行こう」と呼びかけたのです。 今回の都知事選では、僕も実際「ひとり街宣」をしている人に直接会いました。比較的、蓮舫氏を応援する方が多かったです。ただし「(候補者名)さんをよろしく」と口頭で言うのはよくても、直接投票を促してはいけないとか、マイクを使って音量を増幅させるのは駄目だとか、手に持てる大きさの紙で出来たものは持っていいが、その紙に候補者の名前を書くのはダメなど、細かいルールがあります。 ビジネスの世界でC to Cという言葉もありますが、「究極の個と個の向き合い」ですよね。「ひとり街宣」を行った方によると、「民主主義という社会に生きていることが体感できる」「社会に向かっての自分の気持ちも表明できるし、自分自身もこの世の中に対して抱えているモヤモヤが払拭できたり、より可視化されたりして、自分の人生のためにも良い」と皆さん口を揃えて言っています。