コロナ禍の危機を救った「生麩のみたらし」 明治創業の老舗が生んだヒットの陰に社員の行動力
働き方改革で健康経営優良法人に
三輪さんが掲げる「人は宝」というモットーを、新井さんは大切にしています。職人の世界で働き方改革にも着手しました。 長時間勤務にならないよう、2部制の勤務(早朝から午後の早い時間までと、午後から深夜まで)を導入。製造現場の残業はほぼ無くなり、新規雇用や離職率の低下にもつながっています。 イベントの際は、搬入・設営作業が深夜に及んだら翌日は午後出勤にするなど、残業を避け、1日8時間以上勤務しないように調整しています。 新井さんの入社当時から人材不足が課題で、特にアルバイトやパート従業員の確保に苦労しました。そんなとき、新井さんは近所の喫茶店の店主から、近隣の学校に通うベトナム人留学生を紹介されました。最初は悩んだものの、試しに来てもらうことに。言葉はほとんど通じませんが、簡単な言葉ならスマートフォンですぐに翻訳ができます。 ベトナム人は真面目で手先が器用な人が多く、ラッピングなどはお手の物。会話の感覚も日本人と近かったといいます。「卒業すると国に帰りますが、新しい学生に継続してきてもらっています」 勤務体制の改善や健康診断の受診率を90%に高めたことなどが評価され、麩柳商店は健康経営優良法人(2020年)や、名古屋市の「ワーク・ライフ・バランス推進企業」(2019年)に認定されました。
コロナ禍で売り上げが8割減
麩柳商店はコロナ禍前は上り調子で、2019年は過去最高の年商を記録しました。それでも、京料理につきものの生麩は、関東での知名度が低く、全く売れなかったこともありました。 そんな矢先にコロナ禍となり、麩柳商店の売り上げは2019年と比べて8割も減りました。生麩を扱う旅館や料亭、仕出屋などからの注文が軒並みストップ。問屋も売る先がなく、自分たちで開拓もできない。八方塞がりの状況でした。 それでもコロナ禍で新井さんにアイデアを練る時間が生まれ、一般消費者への生麩商品の販売を思いつきました。