渡辺和史七段、山川泰熙四段が語る、一進一退の攻防 第37期竜王戦七番勝負第2、3局
12月11日、12日に行われた第6局で藤井竜王が勝利し、竜王4連覇の偉業が達成され幕が閉じられました。本稿では激闘が繰り広げられた第2、3局を渡辺和史七段と山川泰熙四段の解説とともに振り返り、対局者の印象、話題を呼んだ佐々木八段の戦型選択について語っていただいています。 ※2024年12月3日に発売された『将棋世界2025年1月号』(発行=日本将棋連盟、販売=マイナビ出版)より、一部を抜粋してお送りします。
(以下抜粋) ―本稿では竜王戦七番勝負の第2、3局について渡辺和史七段と山川泰熙四段にお聞きしていきます。まず、現在の藤井聡太竜王と佐々木勇気八段についてはどのような印象をお持ちですか。 渡辺「藤井竜王は相変わらず強いのですが、最近のタイトル戦では堂々と構えて相手の指したい順を指させている感じがあります。それに対して趣向を凝らしていますね。佐々木八段は積極的、意欲的な手を多く指しており、自分の読みに自信を持っている雰囲気ですね」 山川「藤井竜王については渡辺七段のおっしゃる通り、相手の趣向にどう対応するかという将棋を指しています。ただ、角換わりの後手番では自分の指したい形を採用しています。調子は相変わらずよさそうですね。佐々木八段は自分の指したい将棋を強く持っていて、それを毎局盤上で実現しています。長考をいとわないことに充実を感じ、指し手も正確です」 ■【第2局】意表の作戦 ―まずは第2局から。山川さんは本局の記録係を務められました。 山川「ざっくばらんなことを言いますと、奨励会の例会とかぶったので、私に依頼があった背景があります。絶対王者の藤井竜王と、いま最も充実している棋士の1人である佐々木八段の対局を間近で見られるのは勉強になると思いました」 ―佐々木八段の先手で、矢倉模様の出だしとなりました。 渡辺「佐々木八段は先手で角換わりを採用することが多かったので、意外とも言えますが、この形の可能性はありました。持ち球としてストレートをぶつけるか、変化球を投げるかですが、本局については変化球というほどではないと思いますが、佐々木八段が用意した順でしょう。矢倉と相掛かりとの中間ですが、最近は多いイメージがあります」 ■【第3局】振り飛車採用のかいはある ―続いて第3局です。本局は後手番の佐々木八段がダイレクト向かい飛車を採用しました。 渡辺「これは予想できないでしょう(笑)」 山川「第2局の帰り道で話す機会があってそのとき、この戦型に興味を持たれていた雰囲気でした。ですからあるいはとは思いましたが、ここで本当に変化球を投げるとは」 渡辺「実戦で投げるのは勇気が要ります。どこまでが予定だったのはわかりません」 ■前半戦の印象と後半戦の展望 ―これで七番勝負の前半が終わったわけですが、ここまでの印象と後半の展望をお願いします。 山川「藤井竜王としては相手の作戦に苦慮しながらも先手番をキープしているので、まあまあといった感じではないでしょうか。佐々木八段もリードはされていますけど、作戦選択はハマっているので、悲観せずに戦える手応えは感じていると思います。今後はどちらが後手番をブレイクするかがカギで、前半同様、佐々木八段の作戦選択に注目が集まりそうです」 渡辺「藤井竜王は押されている将棋が続きましたが、勝ち越しで乗りきれたのは大きいですね。佐々木八段はのびのび指している感じで、らしさは出ています。ただ後手番を早めにブレイクできなかったこともあり、次に先手で負けて追い込まれるとキツイですよね。何回も気の利いた作戦を投げるのは大変だと思うので、第4局の先手番での作戦に注目です」 (第37期竜王戦七番勝負第2、3局 持ち味発揮の前半戦―勇気の作戦、対応する藤井/【解説】渡辺和史七段×山川泰熙四段 【構成】相崎修司)
将棋情報局