高級魚トラフグ 豊漁で給食に「ふぐめし」 イクラは高騰…おせち食材ピンチ
福島県沖で今、トラフグが大量に水揚げされている。漁獲量が15年前と比べて18倍だという。その一方で、おせち料理に欠かせない魚介類の価格が高騰している。 【画像】専門店「10年後食べられない」 イクラ丼の値段4倍
■トラフグ大豊漁18倍 漁師「東の相馬に」
フグの王様と称される「トラフグ」。近年、福島県沖で天然トラフグの水揚げが急増している。福島県相馬市の競り場にはトラフグがびっしりと並べられていた。 1キロおよそ5000円で取引され、漁獲量の7割を東京・豊洲や大阪、京都に卸し、今や年間売り上げは1億3000万円超え。 漁師 石橋正裕さん 「(以前)トラフグは、年に1匹か2匹見ればいいぐらいの魚だった。とれる魚が変わってきているのが、今この福島沖の現状ですね」 福島県沖でのトラフグの水揚げ量は、15年前には2トン弱にすぎなかったが、2021年から2023年にはおよそ30トンに急増。 石橋さん 「西の下関、東の相馬、福島って言えるほどの一大消費地にしたいなというのはあります」 地元の漁協や観光協会では、福島県沖でとれた天然トラフグを「福とら」と名付け、ブランド化に力を入れている。 地元で40年ほどフグ料理を提供している割烹(かっぽう)料理店。以前は県外でとれたトラフグを使っていたが、5年ほど前からすべて福島県沖の天然トラフグに切り替えた。 割烹やました 鈴木光二さん 「このくらい薄くないと、天然フグは弾力が強いので。他にはない旨味ですよね。人をとりこにするような。一度食べてその旨味を知ってしまうと、また食べたくなるような。フグの味を知りたいというお客様は相馬に来ていただくのが一番ベストかなと思います」
■とれすぎて給食に「ふぐめし」
先月には、地元・相馬市内の小中学校13校で、給食メニューにトラフグが登場。骨でだしを取り、身を加え、しょうゆやみりんで味付けした「ふぐめし」およそ3000食が子どもたちに振る舞われた。 さらに、地元の水産加工業者がふぐの調理師免許をとり、トラフグの鍋セットや唐揚げ、刺し身にして加工している。 ループ食品 森拓也代表 「天然ものが身近になるキッカケ。皆様が手軽に食べやすくなっている」 加工した製品は港近くの市場で販売され、県内だけでなく、県外からもトラフグを求めに来る人がいる。 宮城県から来た客 「宮城から買いに来ました。近くでとれてすぐ食べられるんで、ぜひ食べてみたいなと思って」 山形県から来た客 「フグ目当て。おいしいのを食べるんだったら、山口に行くか、東京に行くしかないのかなと思ってました」 福島県水産海洋研究センターによると、福島沖の海面水温がこの50年で2℃上昇。 福島県水産海洋研究センター 根本芳春副所長 「黒潮の流れが本来だと福島県の辺りだが、最近かなり北上しており、三陸沖のほうまで達している。福島県の沿岸の水温が上がる」 トラフグは山口県などが主な産地だったが、地球温暖化による海面水温の上昇で生息域が北上したせいか、福島沖で大量に水揚げされるようになったという。